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「…また生き延びたんですね、私。」
消毒薬が傷口によく染みてきて生きていることを実感する。
「Aさんって本当に頑丈な体してますよね。」
「それって嫌味ですか?」
「褒めてますよ、とっても。」
わざとらしく呟けば、しのぶがにこっと笑った。
前回の任務地は確か那田蜘蛛山と言っただろうか。鬼との格闘の末、大怪我を負った上に蜘蛛の毒に侵されたAは、山奥で独り横たわり意識を手放していたところを幸いしのぶに見つけてもらったらしい。
それももう少し前の出来事で、今、Aの目に映るのは木製の寝台が並ぶ平和な光景だ。
「気付くといつも
「任務の度に大怪我しすぎです。」
薬の調合か何かだろうか、慣れた手付きで作業をしながら忍が呆れた様子で呟く。それを横目に、Aは小さく口を開いた。
「…だって私、死ぬ気で戦ってるので。」
「鬼殺隊の誇りですね。」
「やっぱり嫌味…?」
「いえ!とんでもないです。」
しのぶとのやり取りは嫌いじゃないな、なんてことを思いながらふっと乾いた笑みを浮かべ、それから自身の足元に向かって声を落とす。
「っていうか、そういう意味じゃないです。」
「え?」
「なんて言うか…その、」
その先にどんな言葉を紡げば余計な心配をかけずに済むだろう。変なところに神経を使うせいか、何だか頭が痛くなる。
「…鬼殺隊のみなさんみたいな、そんな、」
そんな、誇らしい感情じゃない。
廊下を伝ってきた、まだ少し冷たさを纏う風が傷口を妙に刺激する。何か言いたげにこちらを見つめるしのぶに気付かないふりをして、Aは立ち上がった。重傷の割に体は問題なく動くようで、すっと立ち上がったその反動で寝台がわずかに軋む音がした。
「…何でもないです、今回も治療ありがとうございました。」
大切なものを失って、
生きる意味なんてよく分からなくて、
誰かを守ることができるのなら死んでもいい、
そんな風に思った。
そうすれば、こんなちっぽけな自分にも
何かしらの存在価値を見出だせるんじゃないか、
そんな風に思うしかなかった。
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仮屋瀬みらい(プロフ) - 香恋さん» お気遣いありがとうございます( т_т )春から環境が変わってちょっと疲れているのかもしれません、、また余裕ができたら更新いたします◎楽しみにしていただいているところ申し訳ございませんが、もう少し待っててください( т_т ) (6月15日 21時) (レス) id: 51aa3d423f (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 仮屋瀬みらい様、お忙しい中お知らせありがとうございます…!お身体心配です(;_;)私生活あってこその活動ですのでどうぞ無理せずまた心から執筆したい時でいいと思います。綺麗な文章なのできっと何度も推敲して更新されてるんだろうなぁと。いつまででも待ってます! (6月15日 10時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 無一郎 霞柱さん» 本作を見つけてくださりありがとうございます🥲温かいコメントまで嬉しいです...!これからも更新頑張りますので応援していただけるとありがたいです。無一郎くんの良さを書けるように頑張りますね❤️🔥 (5月29日 23時) (レス) @page9 id: 51aa3d423f (このIDを非表示/違反報告)
無一郎 霞柱 - 初めまして。私は無一郎の大ファンでこの作品を見れてとても嬉しかったです。この作品は何度でも読み返せる作品だと私は思います今後も楽しみに期待しています! (5月29日 20時) (レス) id: e0adcf337a (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 香恋さん» 更新が遅くて申し訳ないです頑張りますね( т_т )!文章を褒めていただけることが何より嬉しいので香恋様のコメントに嬉し泣きしそうです( т_т )繰り返し読んでくださってるなんて...!たくさん作品を愛してもらえると嬉しいです( т_т )✨ (5月19日 20時) (レス) id: 51aa3d423f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仮屋瀬みらい | 作成日時:2023年5月15日 0時