・ ページ2
宮近「そんなやばいの、ふたり」
「分かんないけど、アキはやばそう」
すべり台とブランコと砂場からなる小さな公園で、
ブランコの柵に並んで腰掛ける。
近くのコンビニで宮近が缶チューハイを買ってくれたので、素直に奢られた。私の分と、アキの分。
間も無く、部屋着のままのアキが私たちのもとへふらふら歩いてきた。
元々すらっとしている彼女の疲れ切った姿は、放っておいたらどこかへ飛んでいってしまいそうに見えて、
あと、こんなアキを私1人で受け止め切る自信もなくなってきて、
宮近がいてくれてよかったかもしれないと思った。
「どうした。」
宮近が柵から腰を上げて、私の隣はやって来たアキに変わる。
「海人となんかあった?」
宮近「俺外そうか」
「とりあえず飲む?笑」
汗をかいた冷え冷えの缶チューハイに触れもしない。
眼鏡のフレームの奥でまぶたが腫れているのを隠しきれていない。
そこからまた、大粒の涙がこぼれる。
ここまで参ってる姿を見るのは初めてな気がして、私まで泣きたくなった。
視線を正面に立つ宮近のスニーカーに変える。
もし海人と、
どうしてもうまくいかなくなっちゃったんだとしても、
私たちの仲を心配することなんてない。
親友に今更何を言われたって引かないし、責めたりなんてしない。
味方だということが伝わればと思って、
缶を片手にまとめて、空いた手でアキの手を握った。
宮近が姿勢を変えるたびに鳴る、スニーカーの底が地面の砂を擦る音と、やかましいセミの声だけを聞く時間がしばらく流れて
ようやくアキが口を開いた。
「3回やったんだけど、3回陽性だった」
「ん?」
「陽性。」
「1回用を買って、そのあと2回用買った」
「風邪ずっと治んないし、生理来ないし、」
アキが自分の身に起きたことを多分逆さまに説明し始めて、
何の話かは、何の話と言われなくても、私にも、多分宮近にも分かった。
「ハルだったら、元太に言える?」
「元太に言える?」
頭を落として泣き続けるアキの隣で、
すぐに答えが出ない私は、どういうわけか宮近と目があった。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←15 -side A-
47人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひま | 作成日時:2023年7月16日 14時