117話 ページ22
「ていうかね、そもそも二人で会ってるだけでやれデキてるだの気があるだの言われるのが納得いかない…!今回だってそうです!みんな愛だの恋だのに傾倒しすぎてる!」
「うんうん、せやなあ。」
「いいじゃないですか、付き合ってた人が二人もいれば上出来でしょ!?それなのに、それなのにぃ……」
文句を垂れながら顔を突っ伏して泣き出した青年の背を優しく撫でてやる。パーティも半ばを過ぎ、客たちは入れ代わり立ち代わりながら、それでも熱は落ち着いてき始めている頃合。
フランが言っとったなあ、とアントーニョは思う。彼は酔うたびに自身の恋愛遍歴を喚き出すのだと。実際目の前の友人は次々とグラスを空けていき、もう顔は真っ赤。完全に酔っ払っていた。
自身の食事はそっちのけにしてあやしてしまうのは性分だろうか。勿論後で何らかの見返りは求めるけれど。だって友人だもの。
「俺は兄貴じゃないから…あんまりモテるとかないしぃ……」
「へえ、タチバナちゃんお兄さんおるんか。」
「そうですよ!兄貴はかっこよくて料理上手でかっこよくて優しくてかっこいい!」
「かっこええのはよう分かった。」
むにゃむにゃと何を言っているのかよくわからないと思えば、突如ヒートアップしてこちらに詰め寄ってくる。それほどに彼にとっての兄は大きい存在のようだ。
「兄貴はね、立派な人なんです。俺なんかの面倒もよく見てくれて、色んなことを教えてくれて……尊敬してるし憧れてる。」
「そか。俺はてっきりタチバナちゃんには妹おるんかなあと思っとったわ。」
「へ?いませんよう、そんなの。いたらもうちょっと女心ってやつがわかるようになってます……」
「へえ…」
自分で言って自分の地雷を踏み抜いたらしい。再び目に涙を溜め始め、そのまま額を机に擦り付けている。彼の髪が数度揺れ、しばらくしてぴくりとも動かなくなった。
ぎょっとして名前を呼んだり頬をつついてみたりといじくり回したが反応は無い。どうやらそれっきり彼は眠ってしまった様子であった。
こんなに普通の子なのになあ、と思う。探偵とはやはり依頼されれば何でもこなす生き物なのだろうか。アントーニョにはどうしたって彼が悪い人間には見えなかった。お兄さん想いで、よく笑って。自分のところの弟分と重なる部分も沢山あったから、どうにも情がわきそうになる。
その度に憤怒した彼の表情と友人のことを思い浮かべて、自分に言い聞かせるのだ。
これはあくまで仕事なのだと。
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時