108話 ページ13
「やめときなよ、誰が来るかわからない!」
「そうだけど…マスター困ってるし。」
「お願い!ちゃんと報酬も払うし、仕事がひと段落したらパーティに混ざったっていい!」
この前の一件で、アルフレッドはあまり社交的な場に出ることを喜ばなくなっている。だがマスターがこうして頼みに来た以上、これは依頼である。
俺の恋人事情は酔った時に話題に上がる話第三位だった。無意識のうちに俺が喚き出すらしい。それを知ってのこの発言なのだが、これは俺にとってもいい提案に違いなかった。
「アルフレッドは何が気に食わない?自分も恋人欲しいってことか?」
「そんなわけないだろ!?どうしてそうなるんだい!」
そんな怖い顔されても困る。だってアルフレッドは学校終わると毎度すぐうちに来るから心配したんだ。顔はいいのに恋人がいないなんて、なんだか勿体無いような気がする。
俺のこの一言はアルフレッドの火に油を注いだようで、今までの剣幕に合わせて力強く腕を掴まれてしまう。こうなると俺はお手上げだ。
困ってしまってマスターの方を向くと、苦虫を噛み潰したような顔がある。そうして何度か俺とアルフレッドの顔を交互に見てから、苦しそうに絞り出した声で言った。
「…わかったよ、アルフレッドも参加していいから!だからタチバナちゃん貸して!」
「なっ、」
「キッチンは立ち入り禁止だけど、好きに飲み食いしてていいから!それにお前が目立てば全て解決だろ!?」
「ぐう…んん…」
マスターもかなり妥協した案らしい。なぜならうちの助手は派手好きの味音痴。しかも顔だけは良いときてる。この状況で連れていったら、趣旨にそわなくなるのが明白だった。しかし背に腹はかえられなかったようだ。度が過ぎる心配性は血筋なのか、アルフレッドはいい顔こそしなかったものの、その条件に渋々といった様子でようやく頷いた。
マスターも微妙な顔をしながらも、少しは安心できたようだ。深いため息を一度ついてから、切り替えるように表情を変えた。
「準備は三時から始めるからね、その時間にバーに来てもらえればいいよ。アルは六時にバーに来なさいな。」
「俺もAと一緒に…」
「アルフレッド、依頼人からの仕事内容は遵守しろ。心配性が過ぎる。」
「ぐっ…」
「ねえこれもしかして最初からタチバナちゃんが言えばよかったかんじ?ねえ?」
137人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヘタリア」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時