37話 ページ39
「言っておくが、残りの謎の方がもっと簡単な話なんだよ。」
「そうなのかい?」
「ああ。あの日お前は動揺してた。だから勘違いしただけに過ぎないんだ。」
きい、と軋む床を2人で歩く。
さっき降りたばかりの階段を上がって、辿りついたのは物置だ。
彼は再びその扉を開く。ふわりと舞い込む風は俺たちと共に入り込んだもので、僅かなホコリを舞い上げた。
あの日、物置では何も見ていないはずだ。それなのに何故。
頭に湧いた疑問を彼にぶつけるよりも早く、彼は部屋の中に入っていく。
ダンボールの山は両開きの窓への一本道を作っていて、それは換気のためにできた唯一の動線だった。
彼は窓の前で立ち止まる。窓からの光は彼を白く包み込む。
視線を下に向けた彼は、「なあ、アルフレッド。これ見てみろよ。」と窓のそばの一つの箱を指さした。
近寄って観察してみるけれど、茶色いただのダンボールにしか俺には見えない。
「これがどうかしたのかい?」
「この箱、一部が若干ふやけて乾いた後みたいになってるだろ。これ多分、入り込んだ雨でこうなったんだよ。」
「……はい?」
「この部屋換気するって言ってたよな。多分あの風の日この窓開けっ放しだったんじゃないか?」
そう言われて思い返してみるも、ピンとくる節はない。でも確かにあの日、朝一度ここの換気はしたはず。ちゃんと窓は閉めなかったっけ?それも曖昧な記憶じゃ確かなことは言えなかった。事実、箱が僅かに歪んでいるわけだし。
風の日の翌日は確かに雨が降った日で、俺は朝学校に行って以来この家に帰ってきていない。
でも第一にこの部屋に入った時に窓は閉まっていたし、開いていたとして、それが果たして謎に関係することのようには思えない。
彼ははっきりしない俺を見ると、これは推測だけれど、なんて前置きをして話し始めた。
「あの風の日にこの窓が開いていたと仮定する。すると風に煽られた窓がどうなるか、簡単にわかるだろ。」
窓は風に煽られて、片側が完全に開いている状態となっていたのだと思う。もう片方は留め金で固定されてる様だったから、いつも換気は左側を開け放っていたみたいだな。
そうして開いた窓は、風で飛んできた色々なものを引っかけたんじゃなかろうか。
例えば、そう。
「あの木に引っかかっていたみたいな、白いタオルとか。」
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時