2話 ページ4
「邪魔すんぞ、クソ髭。」
「邪魔するなら帰ってくれなぁい?」
カラン、コロン
バーの扉にぶら下がった鐘が来客を告げる。同時に先ほどとは打って変わったマスターの(表情から推測するに)皮肉が飛んだ。
マスター曰く今日は元より客の少ない日とのことだったが、先ほどまで自分が一人だけだった空間に足音が聞こえれば、やはりそれは気になった。
失礼かと思いながらもそっと後ろを振り向く。そこには眉尻を釣り上げてマスターの方を威嚇する、金髪に翠眼、そして何らかの制服だと思われる服を着た大変見目麗しく立派な眉毛の持ち主がいた。
同じ男からしてみりゃイケメンなんぞに興味はないが、マスターとはまたタイプの違う美丈夫が現れれば、自虐心も若干煽られる。
東洋人は元々童顔に身長も手足の長さも短めなコンパクトサイズだから、外人には子供に見えることもあるらしい。自分も例外ではないから卑屈になりそうだ。けっ。第一大事なのは心だし。
心の中で悪態を吐いている俺を横目に、その男は俺の横、カウンター席で俺とは二席を挟んで隣に座った。
マスターの顔には嫌悪感が露骨すぎるくらいに浮き出ていて、何も知らない俺でも二人が知り合いであり、且つあまり仲がよくはないことを推測する。
一方眉毛の男もそれは同じようで、酒を1杯だけ頼むと小さく悪態をついた。
気を紛らわすかのように男はこちらへと視線を流したが、肌の色と髪色だけ見て視線を前に戻すと、結局その後にマスターが酒の入ったグラスを彼に渡すまで俺を見ることは無かった。
マスターの長いため息が聞こえる。
「せっかくお兄さんが新しい出会いを満喫していた時にお前が来るとか最悪。」
「あ?俺だってテメーの面なんざ見たくねえけど上がうるせぇから来てやったんだ。有り難く思え。」
バチバチッ
そんな音で火花が散るように、二人の間には明らかな緊張が走っていた。
眉毛の男はきっちり着こなされた服とは対照的にかなり態度が大きく乱暴なように見えたが、マスターもマスターでさっきまでの優しい笑顔は消え失せている。
サンドイッチを平らげていた俺はどうしたものかと悩んでいた。
今にでも喧嘩をしそうな二人を宥めるべきか?いやでも面倒はごめんだし。まだ先払いの料金も残っている。
見当違いの心配をする俺の脇ではマスターと彼が既に嫌味の応酬の幕をあげていた。
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時