26話 ページ28
かちゃり。
最後のワンセットを置いてやっと完成となるそれ。結局買い物を始めたらあれもこれも揃えたくなってしまい、当初の予想よりは物が増えてしまったが、それでも部屋の中の雰囲気がさらに良くなったので満足だ。
たった今ティーカップを置いた戸棚だって、この前一目惚れして増やしてしまった棚であるし。
「随分と見違えた…よな。」
やっと整った部屋を見渡して呟いた。たった今掃除が終わったのである。
全体的にダークブラウンと白で統一されていて、異国の図書館のような、木と紙の温もりが溢れる家に仕上がっている。ちなみに紙は本と俺が持ち込んだ資料たちのことを指す。
劇的ビフォーアフターだ。誰がこんなに綺麗な家になると想像しただろう。
扉を開けてすぐのホールは事務所になっており、二階を吹き抜けにして設置された壁一面の本棚と、天井と二階上部にある窓からの光が来客を出迎える。この天井、操作レバーを回すと日除けのためのシャッターも下ろすことができる仕様だ。
本棚には梯子がついているのだが、ここにある本たちは歴史的な資料からファンタジー小説まで様々なので、探す時は大変苦労する。
ホールの中央、赤いカーペットを敷いた上には俺の仕事机が、その脇には応接用のソファを置いた。ここには玄関で靴を履き替えて入ってもらうことになる。土足だと掃除が大変面倒なのだ。そのためのカーペットでもある。さすがにこの上をずかずかと歩く不届き者はいまい。
ホールの右手には食器棚などが並ぶキッチン。ホールを真っ直ぐ進んだ奥、俺の仕事机の背後には生活スペースへと続く扉がついている。二階へも生活スペースから行くことができ、一階にはリビングとなる洋室(こことキッチンもまた繋がっている)、シャワー室と洗面所が、二階には洋室が二部屋、寝室が一部屋といった間取りだ。ちなみに地下室もある。大して広くはないから、物置にするつもりでいる。
ざっと自分の家を見渡して感慨にふける。こんないい家、あんな破格の値段で手に入れられたことが奇跡なのだ。まあ確かに掃除やら張替えやらやることはありすぎるほどに沢山あったし、安いといってもそこそこの金額は払っているのだけども。
ああ、日頃の良い行いの積み重ねだきっと。
とりあえず一息つくためにポットでお湯を沸かして紅茶を淹れた。
仕事机と共に置いた個人用のソファに座る。とてもいい香りで満たされていく。
家の外に掲げられた看板には「橘探偵事務所」と書かれていた。
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時