23話 ページ25
目の前に座っている東洋人は綺麗な顔つきをしている。決して華やかな訳では無いけれど、笑顔やそのころころとよく変わる表情がよく映える。そんな顔。
初対面の後も彼は時折俺のバーに顔を出しては酒と会話を楽しんで帰っていった。その時にほかの客や眉毛が一緒になることもあれば、ふたりきりの時もある。どんな時間でも楽しかったものだが。
最近姿を見なかった彼の事情は本人から聞いている。少し心配していたが、この様子だと安心できそうだ。
「でも、しばらくしたらまた顔を出せるかと。」
「と、言うと?」
「やっと引越し終わったので。」
「え、ってことはつまりホテル暮らし卒業したの!」
ついついテンションが上がりそう聞けば、彼はアイスティーを口にしながらピースサインで答えた。
宿にずっと泊まっていることも物件探しをしていることも知っていた。長引いていたそれが落ち着いたなら万々歳だ。それに少しばかり彼のいない夜は寂しかったし。
よかったね、と珍しく心からの言葉を口にしていると、突然周りから歓声が上がった。
俺たちは二人揃って身体をはねて、音の方向に何事かと顔を向ける。
そこでは見覚えのある二人がいて、周りには拍手を送る人々がいる。漏れ聞く話と中心の二人を見るに、どうやら告白が成功したようだ。彼は嬉しそうだったし、彼女は照れたように顔を俯かせていた。
「あの子ら、昼間よく見る子だよ。よくデートしてるなと思ってたんだけど。」
「ふーん……」
まだ若い友人たちが、たった今恋人になった瞬間を祝うために拍手を送った。男の方がありがとうと控えめに群衆に向けて告げている。
愛溢れる瞬間についうっとりと顔をとかすと、今まで興味無さげにそちらを見ていた(読み)ちゃんが、急に視線を俺の方に戻した。
どうしたの?と聞けば可哀想だと彼は言った。
「…え?」
「彼、騙されてますよ。」
「どういうこと?」
「見たまんま。」
祝福ムードは鳴り止まなくて、気のいい誰かが2人のためにケーキを注文したようだった。カップルの元に運ばれてきたホールのケーキには、祝いの文言か書かれているのがわかる。
それを邪魔しないように、俺は声を潜めていた。彼はもうあちらには興味が無いようで、残りが小さくなったケーキをつついている。
彼は続けた。
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時