7話 ページ9
「どういうことだ?」
「まあ正確には大体の検討が付く、って感じだけど。」
頭をそのまま隣に座る奇妙な東洋人に向ける。
今日このバーで偶然出会ったばかりのそいつとは、初対面にしては気軽に話せる仲になっていた。
その表情はフランシスの視線を受け、心持ち俯き加減でよく判断がつかない。
俺だって伊達に軍警察などという肩書きは持っていない。先程からこいつを見ていて思うところが無いわけじゃなかった。そしてそれは答え次第では俺たちは敵にもなりかねないということだ。
自然と若干の警戒心と関心が湧く。
「ほら、腕の傷。隠すつもりがあるならもっと自然にしなきゃ。それに手だって一般人のそれじゃない。」
フランシスの指摘に、タチバナは一層こちらから顔を逸らした。
そもそも、最初から座り方にも違和感があった。(読み)は身体を椅子に持たれかけさせることすらしていない。彼の腕にも確かな銃創や切り傷がいくつか残っている。それらは決して古くない。やっと塞がりかけといった具合の傷跡はまだ赤みを帯びていた。
極東は平和な地域だと聞く。その地でのそういった傷はイレギュラーな何かが身近にあったことを示していたし、手の指についたマメがは明らかに扱い慣れたものによって出来たことは容易く判断がついた。
と言っても半分ほどは東洋で商人をやっている胡散臭い男から聞いた話なのだが。
俺たちの指摘に、その男は観念したように笑った。
「その反応は当たりかな?」
「はは、ばれちゃいましたか。」
眉根を寄せながら困ったようなうな顔をして、そいつは頭をぽりぽりと掻いた。まさか二日目にしてばれるとは思わなかった、と伝える声に違和感はない。
だが、俺にとってそんなことはどうでもいい。問題はその先だ。果たしてこいつは敵か否か。それが聞きたい。
万が一敵だった場合、ある程度の距離はやはり置かねばならないのだ。例外も居るが、最悪だってないとも言えない。
「やっぱりね。んで、タチバナちゃんはこっち側なの?それとも、危ない人?」
「えーっとですね。うーん?」
フランシスの問いに適切な答えを返そうとしているのか、タチバナは頭を捻る。こいつはこの手の駆け引きには長けた男だ。俺も彼が口を開くのをグラスを揺らして待った。
暫くして「そうですね、」と意を決したような声が上がる。そうして彼が言った言葉は
「どっちでも有り得る、が正解ですかね。」
というなんとも曖昧なものであったのだった。
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時