【男主】unità difettoso！【APH】

16話 ページ18

｢あ、はい…ありがとう…ございます…？｣



差し出された手に縋り付くようにして立ち上がる。
体重をかなりかけてしまっただろうに、その茶髪の青年はなんてことのないように軽々と手を引き上げて、俺の身を確認する。どうやら怪我の有無を見ていたらしい。何も異常はないのを見てとると、彼は｢大丈夫そうだね｣と呟いた。

それにしても誰なのだろうか。
先程から俺に手を貸した青年の他にはもう一人男がいた。そちらの男の手には消音器のついた拳銃が握らており、検分でもするかのように俺を襲った男をじろじろと眺めたり周囲を見回しながら、最終的には青年よりも僅かに後方の位置で俺と横たわった残骸を眺めることにしたようだった。さっきは暗がりでよくわからなかったが、その男も青年とよく似た顔付きの若い男であった。少しばかり目付きは悪いが。

青年はにっこりと笑っている。その笑顔自体は人に警戒心を抱かせなかったが、何処のどいつかも分からない人間を信用はできない。
しかし青年は何でもないようにさらりと言ってのけた。



｢あー間に合ってよかった！こいつ最近巷で金目当ての殺ししててさ、俺たちずっと追ってたんだよね。そしたら君とその後に路地に入ってくこいつの姿が見えてさあ。｣

｢そ、そうだったんですか。助けていただいてありがとうございます。｣



ぺこりと頭を下げると、大したことじゃないよ、と青年は照れたように頭をかいた。
綺麗なスーツをすらりとしたスタイルで着こなしている彼等の姿を見る限り、警察の人間なのだろうかと思う。アーサーとは格好が違うが、部署が変われば制服も変わるだろうし、何より追っていたと言っていた。少なからずこの男を調査していたように思える。

ほっ、と安堵する。
俺は助かったのだ。殺されずに済んだ。
あとは彼らに任せてしまえばどうにでもなるだろう。

そう考えていたら、今まで笑っていた青年は急に目をぱちくりと瞬かせながら、不思議そうに首を傾げて｢でも、｣と続けた。



｢こんな場所で何してたの？大金だって持ってるし。｣



こんな夜中に出歩くなんてと青年は言う。
これは疑われているのだろうか。警察に疑われてはなかなか困ることになりそうだ。余計なトラブルはできるだけ回避したい。先程から目付きの鋭い青年からの視線が体に痛すぎるのも妙にいたたまれなかった。神様助けて。
すぐに弁明をすべく、俺は慌てて口を開いた。

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