11話 ページ13
フラフラと、受け止めきれない衝撃を無理矢理受け止めたからか足取りはおぼつかない。左の頬がじんじんと鈍い痛みを訴えている。それに口の中には鉄のような味が広がり、それは嫌悪感に直結した。それでも裏道の壁を手探りで手繰り寄せるように動かして、目的地へと向かう。
先程よろめいた拍子にぶつかったのは、文字通りの熊のような大男であり、しかもたいそう機嫌が悪いようであった。肩と肩が触れ合った瞬間、怒りの発散に丁度いいと判断されたらしい俺は、問答無用でその拳の餌食になった。
神様とやらが本当にいるのなら俺が何をしたのかと問いたいところだ。まったく、俺でなければ泣いているところだ。ちなみに今目から流れている液体は汗である。
目下一番の問題は金がないこと。働いて稼げないのならこうするのが手っ取り早いと少し足を早めた。
安心してほしい、昔からこの手の店は大得意だ。
大通りから横道に入りずっと奥、ひっそりとした場所にはそぐわないような大きく美しい建物。ミスマッチのはずのそれは不思議な統一感でもって自然な雰囲気を醸し出している。
大きな扉を両腕で精一杯引く。カラン、と鳴るベルの音とともに建物に入れば、そこには遊技場、つまりカジノと呼ばれる空間が広がっていた。
仮面をしたバニーガールがにこやかに柔らかい声で出迎える。
「いらっしゃいませ。」
葉巻の香り。高らかな笑い声。じゃらじゃらと何かがぶつかり合う音。そこを象徴した音が溢れんばかりに俺の身を包み込む。
その声を聞きながら、俺はいかにして稼ぐかで頭を埋め尽くしていた。
そうして遊ぶことかれこれ1時間。
店から出てきた俺の手に持った袋には小銭が大量に詰め込まれ、リュックにも札束が詰められて、そして妙にご機嫌な俺の図が完成することになる。
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時