【d!】8月32日【合作】 (ページ5)

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ひゅう、と笛の音に似たそれが鼓膜を震わせ俺も夜空に視線を移した。
ぱあん、と軽い破裂音。
どん、と腹の底に響く破裂音。
ぱらぱらぱちぱち、と弾ける様な破裂音。
そんな音色を響かせて、宵闇に大輪の火の花が咲き乱れる。

わあ…と感嘆の息と共に吐き出される彼女の声。
もう一度彼女の方を向くと、子供みたいにきらきらと目を輝かせながら打ち上げられる花火に釘付けになっていた。
ああもう本当に、なんて愛らしいのだろう。

来年もその次の年も、どちらかの命が終わりを告げるその年まで、ずっとこうして君と花火を見ていたい。

「……すき、A」

無意識に漏れだした愛の言葉は夜空を彩る爆発に掻き消されてしまったけれど、彼女の耳にはもしかしたら届いたのかもしれない。
こちらをちらりと見て、そうしてふわりと笑みを浮かべてくれた様な気がした。

『あー終わっちゃったねえ…今年も綺麗やった〜！やっぱ夏と言えば花火やんね！楽しかったあ！ねね、来年も一緒に行こね！絶対やからね！』

花火が終わったと同時にぞろぞろと帰路につく人の群れ、かく言う俺達もその群れの流れに沿って会場から出るべく歩いていた。
何処かまだ興奮した様に楽しげに笑いながら強請るものだからそんなに釘刺さんでも来年ももちろん付き合うよと頷いてやると彼女は一層笑顔を輝かせた。
あ〜可愛すぎる〜俺の彼女が可愛すぎる問題〜！

『じゃああたし、こっちやから気ぃ付けて帰ってな！また明日連絡するね！』

そう手を振って踵を返し背中を向けて歩き出す彼女。

ふふ、相変わらず冗談がすきやなあ。

彼女に駆け寄りその細く小さな手を掴んでやると彼女は驚いた様にこちらを振り返った。

「今日は俺ん家寄るって、約束したやんか。なァ、A」