【d!】8月32日【合作】 (ページ28)

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「…好き」
「えっ」
「遊ばれてるなんて私が一番わかってた、でも大好きだったの」
「…さっきも聞いたってそれ」
「授業中眠そうな顔も、メガネを押し上げる姿も、人混みだとこっそり守ってくれるのも、変なこと振られた時に庇ってくれるのも、声も、顔も、ずっと好きだったの！！」

真っ暗で見えなければいいと思ってたのに花火によってみっともない泣き顔は照らされる。涙で滲んだ視界の先には驚いたような顔でぽかんと口を開けるシャオさんがいた。

「私が、一番だって、一番近い女の子だって思ってたんだもん。でもダメだった、結局別の人のところに行っちゃった」

私にとっては初めて見つけた大事な抜け殻(思い出)だったのだ。
例え彼が何個も見つけてその度に古いものを捨てるような人でも、私にとっては唯一で。
なんでこんなにこの人に話しているのか。関係性などないからだ。今日たまたま会って、たまたま一緒に歩いた友達の友達。

「アイツのためにアイツ好みになったのに、悔しい…！」

フィナーレの花火はついに最後まで視界に入ることは無かった。立ったままひたすら泣いて、結局花火に背を向けてシャオさんと河川敷を横並びになって歩いた。
止まらぬ涙を拭うわけでもなく、一緒に歩いてくれた。

「家までもう帰れる？」
「はい。…ねぇ、今日の事は」
「内緒な、さすがに言いふらすようなことはせんよ。」

ふっと手を少しシャオさんは上げると「あー」と声をこぼしてそのまま左右に振った。

「…ま、何時でも不満くらいなら聞いたるわ。少なくとも下手に清楚ぶってるより不満たらたらな方がめんどいけどええと思うで。」

じゃあと言って反対方向にシャオさんは歩いていった。携帯を片手に持っていたから、きっとマップを見ながら帰るのだろう。結局ほとんど家の前まで送って貰ってしまって、罪悪感とか、羞恥心で申し訳なくなる。
でも、いい事に気が付くことが出来た。
充電がギリギリになった自分のスマホを取りだして、とりあえず溜まっていた通知を消化する。

　

約束破ってごめん、今はわりと元気。

でもやっぱムカつくから、虫ドッキリでも仕掛けてやろうかなって。
死にかけの蝉ぶん投げてやろうかなって。

…まぁ、私も持てないけどさ。

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