【d!】8月32日【合作】 (ページ22)

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「……知っていたの。チーノ君が私の事を好いていてくれてるって。気づいてた、とっくの昔に。でも、その時は、あの人の事しか頭になかったから目を逸らすしかできなかった。……最低だよね、今更君の好意に付け込んで。」
「…遅すぎるねんてほんま。」

独り言のように、彼はポツリとと漏らした。彼の取り繕った壁がどんどんと壊れていく様に思う。はじめて、そんな彼を見た。彼はそんな事を言う人じゃなかった。彼は黙って慰めてくれる様な人だった。それは、本当は嘘っぱちであったんだろう。私の前では、いつだって彼は理想の後輩像であった。
長年依存する様に愛していた彼に裏切られた。その事実を知って、とにかく死にたかった。彼と繋がっていたもの全てを消そうと、ふとSNSを開いたら、同期の投稿の中にチーノ君の姿があった。いつもと変わらない笑顔の彼の姿をボーッと眺めていた。それから、気がつけば彼にメッセージを送っていた。一言、「会いたい」と。いつも私を想ってくれる彼の優しさに触れたいと思ってしまった。彼なら、また慰めてくれるだろうと彼の好意を信じてやまなかった、だから利用してしまった。こんな最低な人間なんだから、恨まれていても文句は言えない。

「ごめんね、こんな話とか……聞きたくなかったよね。チーノ君ならって思っちゃったの。」
「いつだって、Aさんが何かを僕に許してくれた事はなかったじゃないですかぁ……なんで、僕に死にたいなんて言うんですか。」
「なんでだろう。もう、なんでもいい。好きにして。チーノ君の気の済むように。」

我ながら本当に酷い事を言っていると思う。全部全部放り投げて彼に選択肢を握らせているのだから。今までそんな事させなかったのに、本当に可哀そうだ。でも、もうどうだってよかった。何もかもどうでもよくなってしまった。今更、彼の想いを知っても私には何も出来ない。答えることすらままならない。愛する事が出来たなら尚幸せだっただろうが、私は彼を愛せない。それ程までに私はあの男におかされてしまったのだから。せめて、私を堕ちる所まで堕として、日の光の届かない場所へと閉じ込めて欲しい、彼が本当に私を想うなら、必ず私の望みに応えてくれるから。

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