【d!】8月32日【合作】 (ページ21)

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「Aさん、なんであの男と結婚したんですか？あんな男、どこが良かったんですか？あなたを唆して、あなたの身体を貪って、あなたの大事な生活を踏みつけて……終いに、あなたの事を捨てたゴミカス脳味噌チンコ野郎だったじゃないですか！？なんで、なんで、もっと気づかなかったんですか？僕の事を、もっと見てくれたって、良かったじゃない、ですか……」

　ギリギリと締める首元が苦しくて堪らない。このまま死んでしまう、そんな彼の感情の波に当てられて涙が零れ落ちる。今まで彼の内にあった恨みが私を押しつぶす。溺れていく。息が出来なくなる。彼の叩きつけるような怒りの声は、やがて悲痛な叫びに変わる。その様な中で、私はただ彼に謝ることしか出来ない。

「…っご、めんね、」
「謝らないで…くださいよぉ。」

すっと力んでいた締める手が緩まる。その一瞬のすきにゲボゲボと咳き込んでいれば、すぐさまギリギリと私を締め上げた。うまく酸素を吸えず、余計に苦しいばかりだった。何が苦しいのか分からない。けれど溢れる涙は留まることを知らない。久しぶりに、こんなに泣いた様に思う。チーノは、自分で首を絞めているのに辛そうな顔をしている。一思いに、ころしたいならころせばいいのに……

「僕は、ずっと先輩が憎かったんですよ。ずっとずっと、僕の事を見て欲しかったのに。どうして今更僕の事を見るんですか、どうして今更僕の所に来るんですか？もう一生、先輩に会いたくなかったのに。ずっと僕をぐちゃぐちゃにして弄んだ事をただ憎んでいたかったのに！」
「うぐっ……」
「死にたいなんて言うからですよ。」
「ち、のくん…ごめん、なさ……」
「だから、謝らないでって……」

　彼は、私の姿を見ながらグスッグスッと鼻をすする。泣きたいのはこっちだと言うのになぜ君が泣いているのだろう。死んで欲しいのか、死んで欲しくないのかがハッキリとしない。不思議なものだ。
　しばらくする完全に首元の手が離れて息が楽になる。はぁ、はぁと呼吸を整えれば多少は楽になった。ふと、視界の端で、水ようかんが本来のてかりを失っているのが目に入った。彼に水ようかんが好きだと、いつか言った気がする。そんな些細な事、私は忘れていたというのに。誰も私の好物なんて覚えてくれていなかったというのに……

彼に言わなければならないことがある。ゲボゲボと咳き込んでから、私は口を開いた。