【d!】8月32日【合作】 (ページ3)

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「一命を取り留めたみたいで良かった…それに同じ部署の彼氏も付き添ってくれとるし、Aはきっと大丈夫やね」

するとその女性社員は「は？」とまるで化け物でも見るかの様な表情で僕を見上げました。

「うちの部署に男性社員なんかおらんけど……それにAに彼氏なんておらんし付き添いなんかも見えへんけど。なに言うてんの？見間違いちゃうん？」

その言葉を聞いた瞬間、ぶわっと冷や汗が噴き出しただけではなく全身に鳥肌が立ち震えまで止まらなくなった僕は思わず口元に手を当ててしまいました。
そうだ、そうだった、彼女の所属する経理部に現在男性社員は一人も居ない。
こんな当たり前のことをどうして今の今まで忘れていたのだろう。
それによくよく思い出してみれば彼はずっと一人で喋っていた様な、彼女と会話なんてしていなかった様な。
そもそも遠巻きで見ていたはずの僕に、どうして彼の声が聞こえて、

僕は叫び出してしまいそうになりながらももう一度救急車に視線を向けました。

彼は、こちらを向いていました。

じい、と。
まるで最初から僕の立っている場所が分かっていたみたいに。

呼吸が乱れ涙が溢れ出しそうになる僕を見つめていた彼はゆっくりと口角を上げると、自分の唇に人差し指を押し当て「しー」と息を吐き出しました。
まるで鼻先が触れ合う距離に居るみたいに、その音は鮮明に鼓膜を震わせました。

「やあっと手に入ったんや、放っておいてくれへんか？」

「もし邪魔をするんやったら」

「ころしにいくで、次はお前を」

それから、彼女は行方知れずになりました。
運ばれた病院に何度問い合せても彼女の名はなく、入院などしていないと言われたのです。
きっと彼女は彼に何処かで気に入られてしまったのでしょう、そうして連れていかれてしまったのだと思います。
この話は、ずっとずっと心の中に仕舞っていたのです、僕だけの秘密でした。
でも最近、誰かに見られているような気がするのです。
それからぼそぼそとした低い声も、鼓膜に張り付いたみたいにずっと止まないのです。
どうしても一人じゃ抱え切れなくて、このままじゃ僕まで気が触れてしまいそうで！
だから貴女にこの話を……え？どうしたんですか？なんで僕の後ろを、

(ころしにきた)