【d!】8月32日【合作】 (ページ20)

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「うん。死にたい。」
「えっ？」

「死にたいの。」

　口走った時にはもうすでに遅し。つい、言ってしまった。こんな事まで言うつもりではなかったのに。でも、もう言ってしまったらどうでも良くなった。すっと気持ちが楽になったかもしれない。誰かに聞いて欲しかった、今のしんどさとか苦しさを分かちあって欲しかった。本当に言いたかった事だった。でも、言ってしまえば彼は困るって分かっていたのに。突拍子もない事に彼は口をあんぐりと開け、次に継ぐ言葉を見繕っているようだった。申し訳なさに目を伏せていると、確かにその言葉は私の耳に入ってきた。
　
「……じゃあ、死にましょうよ。」
「えっ？」

パッと目を上げれば、彼は私をじとりと見ている。ふざけた眼鏡の奥底から何かが覗いている。その言われも無いような奇妙さに身構えていると、彼は立ち上がって私の前へ1歩、また1歩と近づいてくる。

「死にたいんでしょう？」
「そう、だけど。」
「僕は、先輩と一緒に死ねます。」
「ど、どうして？」
「はぁ……言わないと分からないんですね。」

彼は、私の前に立つ。見下ろされている。今まで彼が私に向けたことの無いような感情がじんわりと包んでいく気分だ。ましてや、冷房の効いた涼しい部屋だと言うのに、じんわりとした熱気にやられてつぅと汗が伝う。そして、顎元に手を添えたと思ったらすぐさま私の呼吸は閉ざされた。突然の出来事に抵抗も何も、ただ喰われるままであった。彼が深く深く息を飲み込むものだから、苦しさに目の前がチカチカする。もう限界と思った所でようやく開放された。

「……っはぁ、Aさん、Aさん。Aさん。好きです、愛してます。」

耳が溶けるほどの甘さのせいか、思わずクラクラしてしまう。キス自体は初めてではないというのに、こんなにもやられるのは初めてだ。彼の不意打ちに、思わず顔が赤く染る感覚を得る。一体どうしてこんなにも彼に愛されているのだろう。驚きや恐怖なんかよりも、苦しさに伴う快が心をくすぐる。そんな幸も束の間で、彼は、そのまま手を首元へと降ろすと、両手で締め上げた。まさに、憎きものを殺さんばかりの勢いである。