178秒 ページ28
ジリジリと距離を詰められ、顔はくっついてしまいそうなくらい近い。
ドキドキと騒ぐ心臓は、甘酸っぱい空気を予感してではない、純粋な恐怖故だ。
どれだけ今のサボから逃げたくとも、鳥の背中という限られた範囲で、これ以上身動きは取れない。
振り向いた体勢のまま見つめ合うこと、約三秒。
普段なら一瞬に過ぎるその秒数が、この瞬間だけは永遠に終わらないんじゃないかってくらい長く感じている。
｢本気で言ってるっつうなら、今すぐこっから突き落とすぞ｣
｢……サボには、わかんないよ｣
先に目を逸らしたのはあたしの方。
正面を向き、後ろに流れる雲だけに目をやる。
｢わかってねぇのはお前の方だ。
Aが居なくなって、オレらがどれだけ悲しんだかわかるか？
どれだけ苦しんで、自分を責めて、人を責めたと思う？｣
｢そ、それは…｣
｢可能性は限りなく低いとわかっていても、それでも｢もしかしたら｣って希望を捨て切れなくて、前進も後退もできずに身動きが取れなくなって、それでも無理矢理立ち上がる気持ち、お前にわかるのかよ？｣
…わからないよ、そんなこと。
サボ達があたしの不安を理解出来ないのと同じ、あたしはサボ達の気持ちが理解出来ない。
きっとこう思ってくれてるだろうって想像はできたって、心から共感はできない。
何も答えられなくて口を紡いでいると、後ろから伸ばされた腕が首元に回った。
ぽすっと肩に置かれたものがサボの頭なのは、さわさわと頬に触れる金色でわかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 357人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三暁 那保(プロフ) - ひいらぎ。さん» 最後までお読みくださって、どうもありがとうございます！ いつも、暖かいコメントを頂けて、本当に嬉しく思っておりました。どこかで名前を見かけましたら、覗いて頂けると幸いです。最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました！ (2020年10月10日 20時) (
レス) id: 7810e58c3c (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ。(プロフ) - また三暁様にお会い出来ましたら、読ませていただきます！止まった時計、お疲れ様でした！ありがとうございました(*^^*) 長々と申し訳ありません。 (2020年10月10日 14時) (レス) id: 9be106f98e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ。(プロフ) - 遅くなりましたが、完結おめでとうございます！そして素晴らしい作品をありがとうございます！最後はどう終わるのかとてもドキドキしてました！三暁様らしい丁寧な世界に入り込めそうなほど、素敵な最後でした！また読み返してきます(*^^*)→続く (2020年10月10日 14時) (レス) id: 9be106f98e (このIDを非表示/違反報告)
三暁 那保(プロフ) - サッカーバカさん» ありがとうございます。記憶喪失はロマンですよね(笑) 次の作品はまだ未定ですが、どこかで名前を見かけた際には、覗いて頂けると幸いです。最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました。 (2020年10月8日 21時) (レス) id: 7810e58c3c (このIDを非表示/違反報告)
三暁 那保(プロフ) - あおい亜緒さん» どうもありがとうございます！ 読んでくださる方がいたからこそ、こうして完結することができました。心から感謝しております。本当にありがとうございました。 (2020年10月8日 21時) (レス) id: 7810e58c3c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三暁 那保
| 作成日時：2020年8月10日 19時
