[ONE PIECE] ユメうつつ -6- (ページ20)

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No.216 ページ20

向かうのは、総長の口元。

パクッと食べた際、唇が指先に触れる。

貴｢っ…｣

ｻﾎﾞ｢ん、美味い｣

ｺｱﾗ｢ちょっとサボ君！
それ、Aにあげたやつ！｣

ｻﾎﾞ｢いいじゃねーか、一つくらい。
なあ、A｣

貴｢ふえ…っ？あ、えっと…そのっ｣

落ち着けとどれだけ必死に宥めても、まったく意味を成さない心臓。

｢A？｣と不思議そうな顔をする総長を見て、早く落ち着かないとと焦れば焦るだけ、心音は大きく、速くなる一方で…。

ｺｱﾗ｢……ほらサボ君、勝手に食べるのはダメだよ。
そんな風に取っちゃうから、Aがビックリしてるじゃない｣

心臓が激しく脈打ち、全身が熱を放ってるみたいで、触れた指先は特に熱い。

ｻﾎﾞ｢そうか、それは悪かったな、A。
でも美味かったから、もう一枚くれ｣

貴｢…ど、どうぞ｣

師範代には申し訳ないけど、今食べたって、
どうせ…味なんかわかんない。

───
──

後ろへと流れる海は、一定の間隔で白い線を引く。

波同士のぶつかり奏でる音を聞きながら、私はへりにもたれるようにして、腕を船の外へと投げ出した。

潮風が指先を掠めるたびに、先程の熱を思い出して顔が赤くなっては、自分の失態に青くする。

自分の事でいっぱいいっぱいだったから、そんな百面相を見られているなんて、全然気づけなかった。