〇無茶をしたから ページ8
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私の目の前には、Aが筒の中で浮いている。
左腕と両足はまだ未完成のまま、外に出てしまったから、そこを作るために。
数日前、例の黒羽くんからメールが届いた。
中森さんからは、毎日のように「今日は、何があった」「早く来てね」とメールが届いていたが、彼だけはミステリートレイン後、一通もメールは来なかった。
まるで、返信が来ないことが分かっているかのように。
そんな彼からいきなりメールが届いたので、いままでの中森さんのメールと黒羽くんのメールをAに見せた。
見えにくかったようで、読み聞かせてやれば、何故か筒から出ると言って聞かなかった。
まだ出れないからと止めても一日だけでいいからと無理を言われ、しょうがなく外に出した。
左腕と両足が未完成で、上手くバランスが取れず転倒して頬を打ち少し抉れた。
ガーゼと包帯、そして三角巾を付けて博士が学校の前まで送り迎えをすることを条件に送り出した。
案の定、早退してきたAは足は破損し抉れた頬からは血が出ていて顔色が悪くなっていた。
「…貴方が、私に反抗するなんてね」
「………」
「それで?求めていたものは得られたのかしら」
「………」
目を固く閉じて答えないA。
ポチャン、と血液と薬品を混ぜた液体が落ちることがして、それが破損した体に吸い込まれる。
「貴方が無茶をしたのには変わりないけれど、学校を休み続けているのも不自然だったから、今回のことは見逃すわ」
「………」
「ねぇ、アドニス?」
呼びかければ、薄らと目が開いた。
虚ろな赤い目と目が合う。
「もう、お願いだから居なくならないでね」
「…えぇ」
ボコボコと口から気泡が溢れた。
そして、返事をすればまたゆっくりと瞳を閉じてしまった。
あと多く見積って一週間後になるかしら、Aが外に出るのは。
「いい夢を、おやすみなさいアドニス」
電気を消して、部屋を出た。
返事は、なかった。
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御坂ナツキ(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» ありがとうございます!とても嬉しくて執筆の励みになります!!頑張ります!! (2019年8月19日 21時) (レス) id: 7ae93b89fc (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - はじめまして!少し前から読ませていただいている者です。このお話の独特な雰囲気がどストライクです!これからも楽しみに待ってます! (2019年8月19日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御坂ナツキ | 作成日時:2019年8月14日 21時