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「そういえば、お土産」
大阪を少し回った時のお土産を中森さん、黒羽くん、そして小泉さんと白馬くんにも渡した。
「なにがいいのか、分からなくて。こんなものでごめんなさい」
「ううん!全然!おいしそう!」
「へぇ〜ありがとな!」
「ありがとう、Aさん」
「大事にいただくよ」
そう言ってくれた四人にほっとして、私は席に着いた。
そして放課後、中森さんと黒羽くんとの3人で帰っていた。いつもなら別れ道で私は駅に、中森さんと黒羽くんは家の方向へ向かう。
でも今日は黒羽くんが、用があるからと駅まで一緒に行くことになった。なので、途中で中森さんと別れ、黒羽くんとふたりで歩いていた。
「...」
「...」
「...黒羽くんは、」
「ん?」
「黒羽くんは、"一人目"のこと。知っているの」
「!」
黒羽くんは少し驚いて、でも直ぐに前を向いた。そして、「知ってる」と口にした。
歩みを止めないまま、黒羽くんは口を開いた。
「俺は、一人目を知ってる。けど、知る前にお前は死んだ」
「......」
「世間を知らなさすぎる、ずっと薬飲んでる、定期的に休む、異常に細い...でも、必死に生きてる。笑うと...かわいい。」
「...黒羽くん」
「それくらいしかわからない。なんでって思ったよ。なんでお前は死んだんだって。...でも、お前は二人目として俺の目の前に現れた。」
歩みを止めた黒羽くんが、私の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。
ふわりと二人の間に風が吹く。
髪が揺れ、制服が揺れ、瞳が揺れた。
「一人目のお前は大切だ。でも、今の...いや、Aのことはずっと大事なんだ。だから、もう自分を犠牲にしないでくれ。...もう死なないでくれ」
「......私は、哀が大切。哀を絶対に死なせない、それが私の使命」
「じゃあ、俺はお前を守るよ。俺が絶対にお前を死なせない」
「だから約束してくれ」
手を包まれて、真っ直ぐな瞳からそらせない。
青い、あおい、蒼い。
眩しい。
「いなくならないでくれ」
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御坂ナツキ(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» ありがとうございます!とても嬉しくて執筆の励みになります!!頑張ります!! (2019年8月19日 21時) (レス) id: 7ae93b89fc (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - はじめまして!少し前から読ませていただいている者です。このお話の独特な雰囲気がどストライクです!これからも楽しみに待ってます! (2019年8月19日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御坂ナツキ | 作成日時:2019年8月14日 21時