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「とにかく、さっきも言ったようにBデッキの喫煙室は閉鎖──」
と中森警部がそこまで言いかけたところだった。
藤岡さんの悲鳴がこの場に響き、ガタンと椅子が倒れる。
「た、助けてくれ…」
と振り向いた藤岡さんの手のひらや首元、両頬など至る所が赤く腫れており、場がどよめいた。
「まさか、感染したのか!?」
「そういえばあの方、さっき禁煙室に…」
「助けてくれ…お願いだ…」とこちらへ距離を詰めてくる藤岡さんに警戒して、それから距離をとるように後ろに下がる中、隣に居るAに絶対に近づくなと小さく伝えた。
「落ち着け!落ち着きなさい…!」
「死にたくないんだぁ…!」
足を止めない藤岡さんに、江戸川くんは麻酔銃を構えた。
ところで、目に入ったのは隣にいたはずのA。
「っ!」
「.....」
江戸川くんが麻酔銃を打つ前に、蘭さんが藤岡さんに一発入れたところで、藤岡さんは気を失いバランスを崩した。
倒れ込んだ先にはAがいて、Aは藤岡さんを受け止め接触した。
あのバカ。
その後ゆっくりと横に倒したAと、一撃お見舞した蘭さんに博士はすぐ消毒するように促した。
「こっちに…!配膳室に消毒用のアルコールがあるわ!」
ウェイトレスさんの言葉に、Aと蘭さんは配膳室の方へと駆けて行った。
「まさか、この船から感染者を出してしまうとは…」
「他に喫煙室に入った者は…」
中森警部がそう言った直後、さっきのウェイトレスさんの「ちょっと!大丈夫!?」という声がこの場に響きわたった。
一人のウェイトレスさんが倒れており、彼女には
「発疹が…右手と左腕に…!」
「くそっ、彼女もか…!」
生憎この飛行船には医者は搭乗していない。一応ある診察室の奥にベッドがあるため、そこで隔離することに。
念の為ダイニングは閉鎖されラウンジの方へ移ることになった。
そこで、子供たちがいないことに気がつき、先程見た光景を思い出した。
小嶋くんは、発疹が出ていたウエイターのくしゃみを浴びており、もしも彼女がウイルスに感染していた場合、小嶋くんにも移っている可能性がある。
顔を青ざめて子供たちを探してくると場を離れた江戸川くんの背中を見つめながら、消毒をしに行ったAのことを思い出した。
「...本当にバカなんだから」
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御坂ナツキ(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» ありがとうございます!とても嬉しくて執筆の励みになります!!頑張ります!! (2019年8月19日 21時) (レス) id: 7ae93b89fc (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - はじめまして!少し前から読ませていただいている者です。このお話の独特な雰囲気がどストライクです!これからも楽しみに待ってます! (2019年8月19日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御坂ナツキ | 作成日時:2019年8月14日 21時