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灰原に誘導されて入った研究室。
真っ暗で、その中にぽつんと青白い大きな筒。
その中には筒全体に広がる水。
コポコポと水槽のように下から上へと泡が舞い上がり、その音と機械の稼働音が混じりあっていた。
ポチャン、と赤黒い液体が定期的に落ちて広がりそれが筒の中にある"物体"に吸収され、形を作っていく。
その物体は、この前ミステリートレインで爆発に巻き込まれたはずのアドニスで。
「未完成…って、」
「見ての通りよ。腕、脚はまだ出来上がっていないから外に出ることはもちろん出来ないわ。後は呼吸器、消化器が成熟していないわ」
ポチャン、と水の跳ねる音がして水中に広がったその液体は未完成であろう部位に吸い込まれていった。
吸い込まれた部分から、ムクムクと少しずつ肉が形成される。
真っ白な身体で真っ白な髪の彼女は、箱に詰められた人形のように美しくて、不気味だった。
「人造人間…ってことかよ」
「そ。私の血液で作ったから、私にそっくりなの。前貴方が聞いてきたでしょ?それが答えよ」
信じられない。
でも目の前のこの異常すぎる光景が、本当だと言っている。
コポコポコポ…といきなり口元から泡が沢山でてきた。
すると、ゆっくり、ゆっくり、目の前のものが目を開いた。
真っ赤な目が俺を捉えた。
そいつはゆっくり瞬きをして、目を開いた時俺の見たことの無い顔で笑った。
ぞくりとした。
「おはよう、アドニス。」
灰原は筒に触れて、優しい顔でそう接していた。
そんな灰原を見てアドニスも、ふわりと微笑んでいた。
真実を知ることは出来た。
でも、それは残酷だった。
これほど、真実を知って後悔したことはないかもしれない。
俺は正直、こわい、と思った。
灰原が、そしてアドニスが。
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御坂ナツキ(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» ありがとうございます!とても嬉しくて執筆の励みになります!!頑張ります!! (2019年8月19日 21時) (レス) id: 7ae93b89fc (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - はじめまして!少し前から読ませていただいている者です。このお話の独特な雰囲気がどストライクです!これからも楽しみに待ってます! (2019年8月19日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御坂ナツキ | 作成日時:2019年8月14日 21時