* ページ22
・
「黒羽くん?」
「急で悪いけど、家まで来て欲しくて」
「哀が、言ってるから。」
「わかった、ありがとう。」
電話を終えたAは、こちらに黒羽くんが来れるということを報告しに来た。
心做しか嬉しそうに見える、顔。
貴女いつからそんな顔で笑うようになったのかしら。
約1時間後、家のチャイムがなった。
博士は席を外してもらったし、Aは筒の中に入って治療に専念してもらっているため、部屋には私しかいなかった。
ガチャリ、とドアを開けるとそこには
変装のつもりなのか
シンプルにおしゃれなのか、
度の入っていない伊達メガネをかけた青年がたっていた。
「…貴方が黒羽くん?」
「うん。そうだよ、もしかして君が哀ちゃん?」
「ええ、そうよ。さ、入って」
「おじゃましまーす」
ソファに案内すると、彼に少し待っていてもらうように伝えてお茶の準備をした。
ティーポットにお茶の葉とお湯を入れて、ティーカップ、お砂糖、ミルク。
そして、お茶菓子には博士が隠していた(らしい)バームクーヘンを二切れそれぞれお皿に盛り付けた。
「待たせてごめんなさい」
「いや、わざわざありがとう。哀ちゃんに準備させちゃってごめんね」
「気にしないで」
それぞれお茶に口をつけたところで、早速本題にはいることにした。
「そうそう、Aのことで話したいことがあるの」
「あぁ、Aに何かあったの?」
「別に、小さい子に接するような喋り方しなくていいのよ。聞いてるんでしょ?私が何をしてAと関わっているのか」
そう言えば少し目を見開いた後、少し考えて顔を上げた。
「…Aに、何かあったのか?」
「簡潔にいえば、今あの子は左手を失っているわ」
「っ!なんで!?」
「確か貴方と会いに行くと出ていった日だったわ。きっと貴方と別れた後だったんでしょうね、例の連続射撃事件に巻き込まれたのよ」
「…そう、だったのか。…それで今Aは?」
「部屋で治療をしているわ。帰りに覗いてあげて。あの子貴方のことをとても気にしていたから。」
そういえば、少し嬉しそうに頷く彼。
どことなく似ている。
胸の謎のつっかえを気のせいにしたくて、甘いバームクーヘンを、1切れ口にほおった。
63人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
御坂ナツキ(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» ありがとうございます!とても嬉しくて執筆の励みになります!!頑張ります!! (2019年8月19日 21時) (レス) id: 7ae93b89fc (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - はじめまして!少し前から読ませていただいている者です。このお話の独特な雰囲気がどストライクです!これからも楽しみに待ってます! (2019年8月19日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:御坂ナツキ | 作成日時:2019年8月14日 21時