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「終わったね」
「終わっちゃったねー」
すっかり暗くなった駅までの道を風磨くんと2人で歩く。まだ温い夜風がふわりと頬を撫でた。
打ち上げ場所として予約したチェーンの焼肉店は学校の最寄り駅から数駅離れた所で、家に着く時間のことを考えると早めに出ないと明日が不安だった。最初の乾杯が終われば、各テーブルで楽しそうに盛り上がり始める。風磨くん達は席を行ったり来たりしていたけど、私は凪沙や他の子達とのんびりご飯を食べているのが楽しくて、あんまり席を立つことはなかった。元々話す方じゃないから、私はいても居なくても盛り上がりは変わらないし。
一通り食べて、電車の時間が不安になってきたから帰ろうかなと思って、凪沙に割り勘分のお金を預けて席を立つ。1人先に帰るのはちょっと寂しいけど、まぁ明日も学校で会うし。一応風磨くんと、近くのテーブルの子達にばいばいをしてお店を出て、少し歩いた所で「A!」と呼び止められた。振り向くと、リュックを背負った風磨くんが走ってきている。
「え、どしたの」
「俺も帰る。駅まで一緒に行こ」
あっという間に追いつくと、風磨くんが隣に並んだ。きっと、自意識過剰でなければ、クラスの皆に追いかけてこいと追い出されたに違いない。風磨くんは家も近いからまだ時間に余裕があるだろうけど、一緒に帰る相手が出来たのが嬉しくて黙っておいた。やっぱり1人先に帰るのは寂しかったし、風磨くんとは実行委員でずっと一緒にいたから、今日でおしまいになるのが名残惜しかった。
「風磨くん達のテーブル何人前頼んだの? 店員さん困ってたけど」
「軽く20……?」
小声で呟かれた数字に思わず声を失う。男子が集まればそんなものなんだろうか。チェーン食べ放題の焼肉店はどうやって経営を回しているのか少し気になってしまった。
「まぁそれはおいといてさ。文化祭お疲れ」
「風磨くんもお疲れ。本当に1位獲れたね」
「獲ったねー。まさか本当に獲れるとはちょっと思ってなかったけど」
「風磨くんの人望じゃない?」
「いやー、Aのおかげでしょ。看板あたりからスイッチ完全に入ってたもんね」
「うっ……」
にやにや笑いながら言われて返す言葉がなくなる。あの時は完全に苛立ってたけど、思い返すと恥ずかしい。
「カッコよかったなー、キレてたA」
「本当に忘れてほしい」
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