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ドキドキしながら教室に入ると、賑やかだったみんながシンと静かになった。緊張した表情で一斉にこちらを見るから、それが少し面白くて緊張が解ける。
「えー、発表します」
少し勿体ぶるように話し出した風磨くんを、クラスメイトが見つめる。結果を聞いた私も息が止まるような緊張感の中、風磨くんはゆっくり口を開いた。
「……全校1位、獲れました!」
バレないように、と二宮先生に渡していた表彰状を掲げると、戸惑いの声を上げていたクラスメイトが歓声を上げた。嬉しそうな皆の様子に、隣に立つ風磨くんがニコニコ笑う。
「これはマジでみんなのおかげ! 時間無くて、適当な出し物になってたとしても仕方なかったと思うけど、そうせずにここまでこだわって準備出来たのがめちゃくちゃ楽しかったです。ありがとう!」
時間無くて、の部分でじろりと二宮先生の方を見て笑いを誘った風磨くんは、そうあっさりまとめると次は私に挨拶をするように合図した。廊下を歩いてるときから何を言おうかずっと考えていたのに、全く纏まらないままの私はつい首を振りそうになる。
「えっと……。私は頼れる実行委員じゃなかったし、風磨くんに任せっきりどころか問題を巻き込ませてしまったりして、ずっと皆に助けられながらの1ヶ月でした。けど、皆と放課後残って準備をするのは楽しかったし、一位を獲れたことも全部忘れられない思い出です。ありがとうございました」
話しながら、色んなことを思い出して少し声が震えそうになる。誤魔化すように頭を下げると、パチパチと拍手が巻き起こった。少ししんみりとした空気の中、「じゃあ端の列からみんな挨拶していく?」と二宮先生が提案をする。
戸惑いながら、席を立って話してくれる挨拶を聞いていると、部活や塾であまり頻繁には参加出来なかった人も、長時間の準備に率先して手伝ってくれた人も、それぞれの最大限でこのクラスの文化祭に関わって楽しんでくれているのが分かった。それもまた嬉しくて、実行委員になれて良かったなぁとしみじみ感じる。
最後は二宮先生、と話を振ったけれど、「俺何もしてないもん。残りの時間で打ち上げの場所決めでもしな」と言うのでお言葉に甘えてそうすることにした。「どこ行く〜?」とノリノリで前に出てきた樹くんに、先生が少し嫌そうな顔をする。
「はしゃぎすぎないようにしてよ!」
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