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昼からも作業を再開して、私は恥ずかしさから風磨くんをスルーしたまま、夕方の5時を迎えた。丸一日掛けて行った準備のおかげで、看板などはほぼ完成に近付いている。
「みんなお疲れ。一人一個持って帰りな」
ふらりと教室にやってきた二宮先生が、袋いっぱいに詰めた紙パックジュースを教壇に置いてくれた。疲れの出てきたクラスメイト達がわらわらと黒板の前に集まる。
「どうなるかと思ったけどなんとか間に合いそうだね」
やるじゃーん、と二宮先生がにやにや笑う。誰のせいでこうなったんだと言いたいけれど、先生が相手なのでぐっと抑えた。あはは、と苦笑いを返す。
「先生がもっと早く言ってくれたら余裕を持って準備出来たんですけど？」
「それはごめんって謝ったじゃん」
呆れた表情を浮かべた風磨くんが隣に並ぶ。手を合わせて「ごめんね」と笑う先生はかわいかったけど、風磨くんは一切動じずにため息をついた。
「遅くなる前に帰ってよー」と呼びかけた先生は、さっさと教室を出ていく。基本的に放任主義の先生だけど、こうやってたまに覗いてくれたり差し入れをしてくれるから、なんだかんだ優しいよなぁと思う。
「じゃあ今日は解散！ また来週よろしくなー」
黒板の前に立った風磨くんがみんなにそう呼びかけると、ジュースを持ったみんなが「はーい」と返事をした。部活や塾など、都合があって入れ替わったり来れなかったりした子もいるけど、クラスの仲や雰囲気が以前より良くなっている。文化祭マジックというか、間違いなく風磨くんのおかげ。
田中くんの冗談に笑いながら返事をしている風磨くんを眺める。こんな人が、どうして私に告白してくれたんだろう。返事を曖昧にしたままの私に変わらず、いや以前よりも更に優しく接してくれる風磨くんにひねくれた返事ばかり返す私はかわいくないなぁと思う。
「はい。おーいお茶か野菜ジュースどっちがいいい？」
「へ？ ……え、この２つ？」
「これしか残ってなかった」
パックジュースを２つ持った風磨くんが私に差し出す。周りのクラスメイトはオレンジジュースとか紅茶とか飲んでるのに、なんとも微妙な２種類だ。なんでこれを先生は選んだんだろう。
「……お茶？」
「ん。いや先生のセンスないわー」
唇を尖らせた風磨くんが野菜ジュースのストローを開ける。苦笑いを返しながら、私もお茶のストローを開けた。
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