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毛先はくるくるしていて、膝上のスカート丈と、細い足に絶妙な長さのソックスは今時のかわいい女子高生を表している。暑いから、とただ結んだだけの髪に、これまた膝が隠れるスカートとハイソックスの私は、勝負なんてしてないのに負けた気分だ。
「しょ、……佐藤くんは、両手塞がってたから心配してくれただけで」
「あんたさ、朝も勝利くんと一緒の電車乗ってたよね? 勝利くんの何なの?」
「……」
見られてたんだ。終わった、と思わずため息をつきそうになる。中学校の時の悪夢の再来。むしろ、隠してたこともあってそれより酷いかもしれない。笑ってたらきっとかわいい女の子たちは、嫉妬心からかこちらを睨みつけて怖い顔になってしまっている。
きっとすぐには終わらないだろう話に、ペンキを足下に置く。凪沙、食べずに待っててくれてるのかな。先に食べてていいよってLINEだけ送ってもいいかな。
「佐藤くんとは地元が一緒で、幼馴染なだけ。それ以上のことはないよ」
「なにそれ? 聞いたことないんだけど」
でしょうね、と言いそうになるのを堪えて、「あんまり人には言わなかったから」と返す。喧嘩腰の彼女たちは、気が済まないのか「本当にそれだけ?」と詰め寄って来た。
「勝利くんのこと好きなんじゃないの? 私たちのこと、影で笑ってたんでしょ?」
「そんなこと思ってないよ。勝利のこともなんとも思ってないし……」
「言っとくけど、勝利くんだってあんたのことなんとも思ってないからね? 優しいから仕方なく喋ってあげてるだけだって気付いたら?」
リーダー格の女の子がぐいっと距離を詰めて、私の腕を強く掴んだ。思わず後ろに下がると、ペンキの缶が足に当たる。これ以上揉み合いになったら倒してぶちまけちゃいそう。勝利のせいで勝利が言った通りになちゃうじゃないか。
「分かったから……離して、」
「なーにしてんの?」
ぎゅう、と掴まれた腕に更に力が込められた時、階段の上から声が降って来た。振り向くと、ズボンのポケットに手を突っ込んだ風磨くんが踊り場に立って私たちを見下ろしている。
「さっきから黙ってみてたら言いがかりばっかりだけど。あんたらは何が言いたいの?」
静かで低い風磨くんの声は、怒っているということがよく分かって少し怖い。目の前の女の子たちは、顔を真っ白にして踊り場を見上げている。
「とりあえず、うちのAの腕離してくれる?」
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