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勝利と話しながら歩いて、あっという間に駅に着く。ちょうどやってきた電車に乗り込んだところで、同じ車両にいたらまずいかも、といつもの考えが浮かんだ。
「勝利、私あとで車両移動するから」
「へ? あー、いつものね」
一瞬キョトンとした勝利は、そのあとまた呆れたように笑った。
「夏休みだし朝だし、大丈夫だと思うけどね」
「いやだめ、そうやって油断してたら見つかってさ、なんか色々なるんだよ」
「色々ってなんだよ」
そんな中身のない会話をしながら電車に揺られる。数駅過ぎて、そろそろ同じ学校の人が増えてくる駅の手前で移動することにした。
「じゃあ勝利、部活頑張ってね」
「ありがと。Aも準備頑張って」
手を振って座席から立ち上がる。車内は混み合ってきているから、もう学校に着くまでは座れないだろう。
・
実行委員だから、と開始時間より少し早めに学校に着くようにしていたこともあり、同じクラスの子には会うことなく最寄駅に着いた。
数メートル先に、陸上部の人たちに挟まれて歩く勝利の姿がある。相変わらず人気者だ。車両移動して正解だった。間違いなく「誰?」と思われていただろう。
途中でコンビニへ入って行った陸上部の集まりを見送って、そのまままっすぐ学校に向かう。教室に着いたのは私が一番だった。荷物を席に置いて、まだ完成していない看板の色塗りを始める。実は、看板作成だけ凝り過ぎて少し遅れているのだ。
「うわー! 先越されたわ。くっそー」
「おわ。風磨くん、おはよう」
「おはようA。早くね? 遠いのにさ」
「早起き頑張ったよー。勝利と同じ電車だった」
「絶対一番だと思ったのに」
しばらくしてやってきたのは風磨くん。コンビニの袋をぶら下げた彼は朝なのにテンション高く悔しがっている。その様子を見てケラケラ笑っていると、まだ集合時間には少し早いのに、ちらほらとクラスメイトが集まってきてくれる。
結局、対して看板作成は手伝えないまま本業である会計係をすることになった。今日も電卓を叩きつつ、書類を出しに行ったり足りないものを取りに行ったりと雑用に走り回る。朝から集まったのに、気付けばお昼になっていた。
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