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まぁまぁ、と凪沙に誤魔化され渋々校舎へ戻る。１階の生徒会室で新しいペンキや筆をもらった後は、２階の教室の凪沙のロッカーへ。教室内では風磨くんが忙しそうに指示を出したり話合いをしていて、看板作りを終わらせたらなにか手伝わないといけない、と意識が切り替わった。
「……勝利いないし」
教室の前も通ってみたけど、勝利は見つけられなかった。教室の奥で作業をしているのか、外にいるのか。そんな都合よく会えないか。早く外に戻ろうと、早足で昇降口へ向かった。
スリッパからローファーに履き替えて、日陰の多い校舎裏の方へ。体育館の入口をつなぐ手洗い場へさしかかった時、楽しそうな男の子の声と水の音が聞こえてくる。
「勝利勝利！ 見てこれ超キレイに落ちた！」
「ちょっ岸、水出したままこっち向くなよ！」
「あーゴメンゴメン！ あ、」
「あ？ ……ぶ！」
騒がしい声が聞こえる。勝利？ と考え事をしていたら、突然びしゃりと水が飛んできた。しかも数秒間。「バカ！！」「やっべ！！」とあわてて止められたホースの水。恐る恐る目を開くと、焦った顔で頭を抱える男子生徒が２人いる。
「ゴメンゴメンゴメン！！」
「あ……うん、大丈夫……体操服だし」
両手を合わせて謝り倒してくるのは勝利と同じクラスの岸くんだ。水の出ないホースを持ったまま必死に頭を下げている。その奥で蛇口を抑えていたのは勝利で、ポカンとした表情でこちらを見ると、私と気付いたのか慌てて岸くんの隣にやって来た。
「A！！ だいじょう、」
ぶ、と私の全身を見下ろした勝利は、「大丈夫じゃないな……」と呟いた。視線を追って私も体操服を見下ろすと、予想以上にびしょ濡れのシャツと短パンが目に入った。
「わーーっ！！ マジでゴメン！ マジ！」
「いいよいいよ、私もぼーっとしてたから」
岸くんがわたわたとしながら大きい声で謝ってくれる。あまりにも焦りながら謝ってくるのでこちらが申し訳なくなってくる。制服のスカートならまだしも、体操服だし。暑いし動きづらいけど、制服に着替えて作業すれば済む話だ。
「A、これ」
「え？」
気にしないで、と岸くんに首を振っていると、勝利が肩に掛けていたタオルを私に差し出した。反射的に受け取ると「体操服の替え取ってくるから待ってて」と昇降口の方へ歩き出してしまう。
「え、勝利、いいよ」
「まぁまぁAちゃん！ 借りとこ借りとこ！」
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