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その日以降、勝利とはいつも通りに話せるようになった。
別に、喧嘩をしてたなんてことはなくて、なんとなく私が勝手に気まずくなっていただけなのだけど。
残り少なくなった夏休み、勝利が部活じゃない時間帯に部屋へ遊びに行って、漫画を読んだり映画を観たりする。残していた数学の宿題は勝利が渋々教えてくれた。
いつも通りに話して、しょっちゅう顔を合わせていたけど、気になることは訊けないままで。
「勝利、好きな人がいるっぽくて」
「へぇ！」
文化祭の準備２回目。今日も校舎の外の日陰にブルーシートを広げて看板作成を進めながら、凪沙に相談をする。
「しかも、私が風磨くんに告白されたことも知ってて」
「へぇ！！」
凪沙が真剣に聴いているようでいて適当な相槌を打ってくる。もうちょっと親身に聴いてくれないかな。
「噂回ってるのかな」
「えー、聞いたことないけど。回ってたらA無事でいられなくない？」
「学校来たくなくなること言うの止めてよぉ」
風磨くんが文化祭の実行委員し始めてからモテてることは気付いているけれど。イケメンな上に話しやすいし頼りになるし面白いし、と前の席の女の子が盛り上がっていたのだ。
「Aはそれがショックだったんだ？」
「……うん」
勝利が知っていたこと、それをなんてことなさそうに言ったことがショックだった。好きな人がいるということも。
私の返事を聞いた凪沙がニヤニヤと笑いながらこちらを見つめる。けれど私には、幼馴染が離れてしまうことが寂しいのか、好きだから悲しいのかまだ分からないのだ。
「でね、」
「え、まだあるの」
「さっき廊下通った時に見ちゃったんだよね。勝利が女の子と話してるところ」
８月の外は日陰とはいえ暑く、じっとしていても汗が出てくる。熱中症になりたくないと校内の自販機へ向かう途中、勝利がショートカットの女の子と楽しそうに話しているところを目撃してしまった。
ふぅん、と頷きながら凪沙が看板の色塗りを進めていく。「でもさぁ」
「女の子とくらい話すでしょ。文化祭の準備やってればさ。佐藤くん部活も入ってるし」
「そうだけどさぁ。気になるんだもん、楽しそうにしてると」
「そんならもっかい校舎入って佐藤くん探してこれば」
冷たい返事をした凪沙は、「黄色のペンキ無くなりそうだからもらってきて」と空っぽの缶をこちらに渡した。
「ついでに私のポカリも」
「パシリじゃん」
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