▽ ページ6
紙皿に乗せて差し出されたパンケーキを何枚か食べて、改善点を求められた私は「手作り感があって美味しいと思う」なんて苦しい感想を伝えて風磨くんに大爆笑されていた。もっと分かりやすい食レポして！ なんて無茶ぶりにアワアワする私を、メニュー担当のクラスメイトはニコニコ見守ってくれていて優しいなと思った。
まだ残って作るんだというクラスメイトにお礼を言って、家庭科室を出る。風磨くんもまだまだ仕事があるらしく、クリアファイルに資料をたくさん挟んで私の隣を歩いていた。
「風磨くん、最終下校まで残るの？」
「いや、流石にそれはないと思うけど、皆頑張ってくれてるから区切りが良いところまではやるつもり。……Aも残る？」
「え？ うーん、いや」
なんだかこのまま帰るのが申し訳ないような、けれど残っても役に立てることもない。答えにつまっていると、風磨くんがくすりと笑った。
「冗談だって。残ってる人の方が少ないから。また来週よろしく」
「うん。ありがとう」
「送ってあげらんないけど気を付けて帰んなよ。また今度ラーメン食いに行こう」
「う、ん。……ラーメンって」
「だってパンケーキばっか食ってんだもん。肉食いたいな」
「ラーメンでもない」
「焼肉行きてー」
風磨くんの言葉に笑いながら歩いていると昇降口に着いた。案外普段通りに話せたな、と思いながらローファーに履き替えていると、ふわりと影が近付いた。顔を上げると、思っていたよりも近い距離に風磨くんの姿がある。
「やっぱ残んない？」
「へ？」
「俺の助手係として」
「具体的にはどんな仕事を……？」
「俺の話し相手になる」
実行委員の仕事となると猫の手も借りたいような気分なのだろうかと恐る恐る尋ねると、風磨くんはケロッと笑ってそんなことを言った。話し相手って、結局サボってるじゃないか。
なにそれ、とつられて笑った私に、風磨くんは微笑みながら「だって」と話し始める。
「夏祭り行ってから久しぶりに会ったなって思ったら惜しくなっちゃった」
そう言って優しく手を握られた。思わず風磨くんを見上げると、真剣な色を宿した瞳と目が合う。
「社交辞令じゃなく、また遊ぼうね」
「わ、分かった」
目を伏せて挙動不審になり始めた私を、風磨くんはふは、と楽しそうに笑って解放する。完全に手のひらの上で転がされている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
