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「ラーメン行かね？」と風磨くんに誘われたのは、文化祭が終わってしばらく経ってからだった。
二宮先生の宣言通りに行われた席替えでは、前の方の席に移動になった。もちろん風磨くんと2回連続隣なんてことはなくて、席が離れて文化祭も終われば話さない時間は増えた。
「幼馴染」に「彼氏」という関係性も加わった勝利とは、やっぱり学校では知らないフリを続けている。何かと呼び出されている勝利を見る度に複雑な気持ちになるけど、2人で居る時に優等生の仮面を外してのびのびしている勝利を見る度、優越感に浸ってどうでもよくなるのだ。
今日も勝利が帰ってきたら漫画借りにいこうかな、なんて考えていたら呼び止められて、冒頭のお誘いに戻る。今日は凪紗が委員会の日だから、私は１人で帰る日で。いつも風磨くんと寄り道をしていた日だった。
「行こうって約束してたね」
「だろ？ 久しぶりにあそこ行こうよ」
掃除時間も終わって部活に行く人や帰る人と騒がしい教室の中、私の隣までやってきた風磨くんがへらりと笑った。
相変わらずぺちゃんこの鞄なのに、授業で当てられる問題は全部答えちゃうのだから羨ましい。
「行く」
ひとつ頷いて私もリュックを持ち上げると、微笑んだ風磨くんが廊下へと歩き出した。
・
「……そーいやさ」
下駄箱でローファーに履き替えていると、風磨くんがちらりとこちらを見た。
「普通に誘っちゃったけど、佐藤くん怒らない？」
「え？ 怒るのかな？」
「いや知らないけど」
「風磨くんは怒るタイプ？」
「俺は全然気にしないタイプ。むしろ燃える」
「燃える……？」
燃える、はよく分からないけど、風磨くんは気にしないタイプらしい。勝利は……私が男の子と２人で出掛けて怒る図が想像出来ない。幼馴染の期間が長すぎたせいか。
「多分大丈夫じゃないかな。LINEだけしとく」
「大丈夫なんだ。意外」
後で喧嘩になっても俺責任取らないからね、と風磨くんは念を押すと、先に靴を履き替えて外へ出て行った。
忘れる前に、と勝利のトーク画面を開いて文章を打ち込む。
A 風磨くんとラーメン食べに行くことになりました
送信ボタンを押して、風磨くんを追い掛けた。その後はゲーセンに行ったりラーメン屋さんに行ったりで、全然スマホなんか見る暇が無かった。
勝利は? なんで? 嫌なんだけど
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