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「Aお疲れ」
「勝利もお疲れ。コスプレ凄かったね」
「コス……まぁコスプレだったけどさ」
複雑そうな表情を浮かべた勝利が渋々頷く。お化け役をしたかった勝利からすると不本意だったのだろう。
「Aのクラスも凄かったね。俺行けなかったけど、大人気だって皆焦ってたよ」
「パンケーキ作るの頑張ったからね。田中くんと風磨くんがホストクラブ状態だったし」
「どんなカフェだよ」
家に向かう静かな住宅街の中、勝利が静かにつっこんだ。夜風が冷たくて、緊張から火照っていた顔を冷ましてくれる。
「私はお化け屋敷行ったよ。勝利の握手会は休憩中だったけど」
「ほんと？ 結構怖かったでしょ」
「怖かった。怖がりすぎて凪沙に笑われた」
「そんなに？」
文化祭の話をしながら歩いていると、あっという間に家に近づいてくる。私も、そして多分勝利も、言いたいことを切り出さなきゃって思ってるのに、なかなか言い出せずにいた。
無意識に、２人とも歩くスピードが遅くなる。いつもは早足な勝利とゆっくり歩きながら、ついに玄関の前まで来てしまった。
顔を上げると、アーモンド型の形の良い瞳とパチリと視線があう。期待しているような、それでいて少し不安そうな表情は、向かいに立つ私も浮かべているに違いなかった。
「……あのさ。勝利に言いたいことがあって」
「うん」
「今日、風磨くんに返事してきた、よ」
「……うん」
勝利が静かに頷いて続きを促した。ぐるぐる回る頭の中から、ゆっくりと言葉を組み立てて話して行く。
「私ね、勝利とはずっとこのままで居れるって思ってた。幼馴染として、勝利が一番仲の良い男の子で。いつか勝利が告白をオッケーして、誰かと付き合うまではこのままで、勝利に彼女が出来たら離れるのも仕方ないかなぁって。
けど、私を好きって言ってくれる人が出来て、勝利のことを好きな人と話して。ちゃんと想像してみた。勝利と私が、お互い違う人と一緒にいるところ。そしたら、すっごい悲しくて。
勝利の隣は誰にも譲りたくないの。今までもこれからも、隣に居たい」
言いたいことは言えた。小さく息を吐いて口を閉じると、ずっと黙って聞いていた勝利が口元を押さえながら視線を逸らした。街灯に照らされて、ほんのり耳が赤くなっているのが見える。
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