▽ 返事 ページ29
「大変だったけど楽しかったな。早く始まってほしかったのに、始まったと思ったらもう終わっちゃった。準備してる時が一番楽しいって言うけど、本当にその通りだな」
「風磨くん実行委員だったもんね。ありがとうね」
風磨くんが実行委員だったからクラスがこんなにも団結した。４月と比べて教室の雰囲気はとても暖かく感じる。
「んーん、A達が頑張ってくれたからだよ。転校生に着いてきてくれてさ、こちらこそありがとね」
「そういや風磨くんって今年転校してきたんだったね。もう馴染んでるから忘れてた」
「それ皆に言われるんだけど」
唇を尖らせる風磨くんに思わず笑う。だって全然違和感がない。
「転校してきて、Aと隣の席になって、今まであっという間だったな。二宮先生が来週あたり席替えするって言ってたわ」
「席替え……」
そうか。風磨くんとも席が離れちゃうんだ。こんなに仲良くなった男の子は勝利以外では風磨くんが初めてでとても寂しい。けれど、きっと同じように寂しいと思ってくれている風磨くんに、私は伝えないといけないことがある。
「風磨くん、あのね。夏祭りの返事なんだけど」
「うん」
うつむきながらそう言うと、優しい声の返事が返ってきた。気合いを入れて顔を上げると、眉を下げて薄く微笑む風磨くんと目が合う。
「好きって言ってもらえて嬉しかった。風磨くんと話すのは楽しいし、仲良くなれて嬉しかった。勝利以外の男の子と話さないから新鮮だったし……。
けど、ごめんなさい。好きな人がいるから、風磨くんとは付き合えません」
声が震えないように気を付けていたのに、最後は震えてしまった。スリッパのつま先がじんわり滲んだ時、「……やっぱり」と風磨くんが呟いた。
「そうだろうなって思った。Aちゃんわかりやすいから」
「ごめん……？」
「２回も謝らないでくれる？ ２回振られたみたいになっちゃうから」
慌てて口を塞いだ私を、風磨くんが冗談だよ、と笑う。その様子に、少しほっとしてしまう。
「ちゃんと返事くれてありがとう。俺の中でもけじめになったから」
「うん」
「でも、まだ好きでいてもいい？ そんなすぐ切り替え出来ないし」
「えっ。私で良ければ……？」
「でさ、たまには寄り道付き合ってくれる？ 友達として」
「もちろん！」
ラーメン行かないとね、というと、風磨くんが目を細めてそうだねと笑った。
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