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机も全て元通りになった教室に、風磨くんと二宮先生が帰って来る。残念ながら売上１位は取れませんでした、と淡々と告げる風磨くんに、教室の空気が静かになる。
「けどっ！ ……うっ」
突然手で顔を覆って肩を震わせる風磨くん。え？ え？ と心配する皆とは対照的に、壇上で隣に立つ二宮先生は少しめんどくさそうな表情を浮かべている。
「おい風磨？」
心配そうな田中くんの呼びかけに、風磨くんがピタリと止まる。それからゆっくり上げた顔は泣き顔ではなく変顔だった。「なんなんだよ！」というツッコミと笑い声に包まれる教室の中、二宮先生がぺしんと風磨くんのサラサラの髪を叩いた。
「まぁ冗談はここまでにして。売上は２位でしたが、お客さんからの満足度が高かったということで賞を頂きました！ 皆のおかげ！」
そう言って掲げたのは賞状。わぁっと盛り上がるクラスメイトを、風磨くんは嬉しそうに見つめていた。
・
「あれ？」
「Aどうしたの？」
「定期机に入れっぱなしだ。取って来るから先行ってて！」
ふと心配になってリュックを漁ったら、やっぱり予感が的中していた。慌てて履いたばかりのローファーを脱ぐと、凪沙が呆れたようにこちらを眺めている。
「ジュース預かっとくよ。溢れるし」
「ありがとう！」
ストローを刺したばかりの紙パックジュースを凪沙に預けた。さっき二宮先生がお疲れ様ってクラスに配ってくれたものだ。
HRも終わって、今から打ち上げの焼肉屋さんに移動するところだった。当日に大人数で予約なんて取ってもらえるのか心配だったけど、今日は予約が無かったからとオッケーがもらえた。
ゆっくり歩いてるね、という凪沙に手を振って、慌てて階段を登る。スリッパの音をパタパタ鳴らしながらドアを開けると、がらんとした教室の窓際に人影を見つけた。
「……風磨くん？」
思わず声を掛けると、風磨くんが驚いたように振り返った。「どうしたの？」と首を傾げる風磨くんは、明るく振る舞っていたさっきと違い静かな空気を纏っている。
「定期券忘れて取りに来た。風磨くん、田中くんたちと先行ってると思ってたのに」
「ちょっとね。元通りになっちゃったと思ったら、なんか離れ難くてさ」
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