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午後からはあっという間だった。途切れないお客さんと、時間が進むにつれドリンクやアイスの種類が減っていく。品切れになってしまい、風磨くんが閉店を決意したのは文化祭が終わる30分前だった。
「あともうちょっとだったんだけどな」
「こんなに忙しいと思ってなかったね」
A4の紙に大きく「品切れのため閉店！」と書いて貼りに行った風磨くんは悔しそうな表情を浮かべている。
「田中ホストクラブがマズかったな」
「んなこと言って途中でお前もノリノリで出てきてただろ！」
田中くんが笑いながら風磨くんにそう言う。なぜか2日目からは風磨くんもお客さんに混じって話を盛り上げる接客スタイルになっていた。色んな相談に乗ったりしていたらしい。文化祭だからってなんでもありすぎる。
お客さんが全員帰った教室は、さっきまで本当のカフェの店内みたいに見えていたのにがらんとしている。今から元通りに片付けて、明日からは通常の授業がスタートしてしまうのだ。
洗い物は調理室へ。洗濯物は分担して家で洗濯することになっている。使い捨てのスプーンや皿を分別してゴミ袋へ分けていくと、大きな袋はあっという間にいっぱいになっていった。
大量のゴミ袋を捨てに行った風磨くんと田中くんが、今度は掃除用具を借りて帰って来る。砂埃や溢したジュースなんかで汚れた床を掃除していくと、文化祭は本当に終わったんだと実感して少し寂しくなった。
「皆お疲れ。片付け早いね」
床掃除に壁の装飾を外して、後は机を元に戻すだけになったころ、二宮先生がやって来た。「俺は皆を信用してるから任せる」と夏休み前から宣言していた先生は、言葉通りたまに顔を覗かせては「めっちゃ混んでるじゃんやば」と言うくらいだった。
「菊池、そろそろ結果発表あるから職員室前来てくれる？ 皆はそのまま片付けして待機。HR終わったら解散になるから」
「はーい」
淡々と業務連絡をした二宮先生は、そう言うと教室を出て行く。結果発表の言葉に一気にざわつき始めた教室。「売上１位以外は持って帰ってくんなよ！」という期待を背負って、風磨くんも廊下へ歩いて行った。
「んじゃ俺らは打ち上げの店決めるか。焼肉がいい人ー」
「はーい」
「粉物がいい」
「ラーメン！」
スマホ片手に黒板の前に出てきた田中くんに、クラスメイトが食べたい物を口々に言う。多数決で盛り上がる教室を眺めながら、この後のことばかり考えていた。
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