▽ ページ26
想像以上に怖かったお化け屋敷を出て、凪沙に引きずられながら廊下を進む。昼ご飯は３年のクラスが出してる屋台で食べ歩きしようと約束していたのだ。
「しっかり怖かった……勝利の言う通りだった」
「Aがそこまで怖がるのが意外だったな。お化け役も途中から気を遣ってAんとこ来なかったよ」
「凪沙が居なかったら泣いてたよ」
通路の外から脅かしてきたり足を触ったり、かと思いきや、終盤では後ろから追いかけてくるのでとても怖かった。もちろん一定の距離は保つようにしてくれているのだと思うけど、幽霊役の男の子の演技力がまぁ高くて思いっきり叫んでしまった。
必死に凪沙にしがみつきながら、無我夢中で足を動かして無事にゴールに出れたのだった。
「あーあ、昨日行けてたら菊池くんに助言してあげたのに。Aとお化け屋敷行ったら楽しいよって」
「止めてくださいお願いします凪沙とじゃないと無理」
「あんだけ引っ付いてきたらそりゃそうだわな」
呆れた表情の凪沙がこちらを見る。「歩きにくいから離れて！」と怒られたのだ。
「今日返事の日なんでしょ？ 大丈夫？」
「あんまり大丈夫じゃない……」
「とりあえず座るか」
階段を降りて出てきた中庭。空いてたベンチに２人で座ると、ふぅ、とため息がこぼれた。
「……返事は決まってるんだけどね」
「うん」
「相手に悲しい思いをさせるのが自分の言葉だ、と思うと言いたくないと思うし、それなのに今まで通り友達でいたいとも思う。都合が良すぎて最近ずっと自己嫌悪してる」
「……ん」
「けど、それでも頷けないんだよね。もっと早く気づけたら良かったのに」
そしたらきっと、こんな思いさせなかった。
私も、こんなに悲しい思いをしなくて済んだ。
「……仕方ないんじゃない？ 人の気持ちも自分の気持ちも予想も制御も出来ないんだしさ。
ちゃんと２人の気持ち受け止めて真剣に考えて、返事をするって決めたんだからそれで100点で良いじゃん。うやむやにしたり利用するよりずっといいよ」
顔を上げると、じっとこちらを見つめる凪沙と目があった。
思わずじわ、と滲んだ涙に、凪沙がぶふ、と面白そうに笑う。
「そんなんで泣かないでよ。まだ終わってないよ」
「だってさぁ」
たこせん買って来るわぁ、と凪沙が立ち上がる。それを見送りながら目元をシャツで拭った。
まだ文化祭も返事も、告白も終わってないのだ。泣くには早い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
