夏色サイダー【Shori.S】 (ページ22)

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週末はあっという間に過ぎて、文化祭１日目がやってきた。

　勝利とは、一緒にコンビニに行ったあの夜から話していない。勝利の言葉に驚いて、なんの返事も返せないままの私に、「待っててあげるから、心行くまで悩みなよ」とイジワルそうに笑って家まで送り届けてくれて以降、顔を合わせる機会がなかった。

　……いや、私が無意識に避けていたのだと思う。私の中で返事は決まっているつもりなのだけど、いざ顔を見るとなるとなんだか恥ずかしいのと怖いのとで、勝利に会えずにいた。

　そうして、文化祭１日目。風磨くんが上手く纏めあげたおかげで、クラスはカフェ成功に向けて団結の雰囲気が漂っていた。

「いいかお前ら！やるからには売上１位！お化け屋敷に負けるな！」

「「負けるな！」」

　裏方の格好をした風磨くんがそんなことを言う。勝利のクラスのお化け屋敷は前々から期待度が高くて、みんなライバル意識を持っていた。それを上手く煽った風磨くんに、隣に立っていた凪沙がふふ、と笑う。

「でも一番は全力で楽しむこと！怪我なく２日間乗り切りましょう！」

「「おおー！！」」

　クラス全員で円陣を組んで掛け声を合わせる。顔を上げると、向かいに立っていた風磨くんが楽しそうに笑っているのが見えた。

・

「葉月さん！これ３番テーブルに！」

「注文入りまーす！５番テーブルさん、パンケーキセット２つ！オレンジジュースとアイスティーお願いします！」

「アイスなくなるよー！」

　開店から１時間。予想以上にお客さんの入りが良くてキッチンスペースはごった返しになっている。飛び交う声を聞き分けながら、私はお盆の上の飲み物をひっくり返さないようにホールの方へ出ていく。

「お待たせしました、パンケーキセットです」

「ありがとうございます！あ、Aちゃん！おつかれっす！」

「岸くん。お疲れさま」

　パンケーキの乗った紙皿とドリンクを置くと、少し早口な聞き覚えのある声が私の名前を呼ぶ。テーブルには岸くんとあと２人、見たことない制服の男の子が座っていた。

「来てくれてありがとう、ゆっくりしていってね」

「あざっす！紫耀、廉、食おう！」

「うまそー！頂きまーす！」

「んー」

　名前を呼ばれた２人がフォークを手に取る。それにしてもすんごいイケメンだな……勝利と同じタイプだ。慌てて逃げると、周りのテーブルからの視線を３番が集めていた。こわい。