▽ 文化祭 ページ19
気付けば２学期を迎えていた。２学期初めは文化祭があるからか、クラスはお祭りムードが漂っていてふわふわしている。
いよいよ週明けの月曜日から始まる文化祭に、金曜日の今日は午後からはずっと文化祭の準備にあてられていた。
私はといえば、勝利とアイスを食べた夜からどこかぼんやりとしたままで。昨日から始まった接客の練習ではアイスの種類を間違えたりコーヒーを溢したりと細かい失敗を続けている。
「葉月さんごめん、家庭科室からパンケーキの追加もらってきてくれない？」
「行きます、行かせてください。注文も取れない役たたずですみません」
「そんなに気にしなくてもいいよ……？」
テキパキとカフェの簡易キッチンを仕切ってくれているクラスメイトに声を掛けられて頭を下げると彼女は困惑したようにそう呟いた。私があまりにもミスを連発するので、少し休憩をもらっていたところだった。
「今のAなら躓いて皿ひっくり返すとかやりそうだもんな」
「間違いないです……」
「風磨、追い討ちかけてどうすんのよ」
同じくキッチンを仕切りつつも他の最終準備も進めている風磨くんがにやりと笑いながらそう言う。クラスメイトが嗜めてくれるけど、自分でも廊下で派手に転ぶ想像ができてしまうからおそろしかった。
「俺は先生に用事があるから」と、クリアファイルに色々な資料を挟んでいる風磨くんも一緒に教室を出た。賑やかな廊下は見ているだけで楽しくて、もうすぐ文化祭が始まるのだと少しウキウキする。
「文化祭始まんね」
「ね。風磨くんの実行委員の仕事ももうちょっとだね」
「ほんとだよ。こういうのってさ、準備が一番楽しいじゃん？ 始まるのがちょっと惜しいよね」
隣を見ると、風磨くんは微笑みながらもちょっぴり寂しそうな表情を浮かべていて。釣られて私も少し名残惜しくなる。
「それに、文化祭終わったら席替えもあんじゃん」
「あー、そういえば１学期は席替えなかったもんね」
「Aと離れちゃうの寂しいなー。二宮先生にお願いしてもっかい隣にしてもおっか」
「あはは、先生そんなお願い聞いてくれないよ」
わざとらしく泣きまねをする風磨くんに思わず笑ってしまう。風磨くんと隣の席になったからこんなに仲良くなれたのだから、席替えするのは私も寂しかった。
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