▽ ページ18
「はいA」
「ありがと」
コンビニを出て、そのまま駅の近くの公園に入る。
ブランコに腰掛けて、さっき買ったアイスの片方を勝利が渡してくれた。
夏の夜の生ぬるい空気を口の中の冷たいアイスが冷ましてくれる。いつもと同じ寄り道コース。
「今日水道のところで会う前にさ」
「ゴメン」
「そんなに浴びてないから良いよ。でさ、廊下で勝利と女の子が話してるところ見たんだけどね」
「うん？」
プラスチックの容器をくわえた勝利がこちらを見る。
「勝利の好きな人って……」
言葉を続けようとして、あれ、と詰まる。好きな人ってあの子？ なんて訊いたら、私が勝利のことめちゃくちゃ気にしてるってバレるのでは。
「好きな人？」
「いいや、なんでもない……」
「えぇ？ 何それ。A今日どうしたの？」
「どうもしてない」
「ほんと？ なんか変なんだけど」
ズズ、とアイスを吸う音をたてた勝利が、こちらをじっと見つめる。ぱっちりした猫目に捉えられて、思わず視線を逸らした。
「あ、逸らした。なんか隠してるんだ」
「勝利しつこい。めんどくさい」
「Aはワガママ」
悪口にお互いイーッと睨み合う。そうこうしているうちに勝利はアイスを食べ終えてしまって、私は溶けかけたアイスを慌てて食べ進めた。
・
「もう２学期始まるね」
「毎日のように学校行ってたから夏休みだった感じもないけどね」
「暑いのによく走れるよねぇ」
アイスを食べ終えて、帰り道を歩き出す。あと数日後に終わる夏休みに気分が沈む私とは反対に、部活をしている勝利はけろりとしていた。
「……ねぇ、転校生の人への返事はもうしたの？」
「えっ！？」
「夏祭りから結構経ってるけど」
「そうですけど……」
唐突に今一番の悩み事を突かれて、脳内がパニックになる。風磨くんからは返事の催促はされてないけど、そもそも最近遊んだりできてないし。でもこのままうやむやにするのは良くないし。
「ちょっと癪だけど、やっと俺のことも見てくれるようになったってことかな」
「……え？」
思わず、勢いよく隣を見上げた。目があった勝利は真剣な表情でこちらを見ていて、どくりと心臓が大きく跳ねる。
「俺の好きな人。ずっと近くにいるのに、全然気付かないから困ってたんだけど」
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