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「Aだってクラスメイトの前と俺の前じゃ違うでしょ。大人しくしてるのに俺にはワガママばっかり」
「ワガママ……」
「え、自覚なかったの？」
「いや、お母さんにも似たようなこと言われたから胸が痛い」
私そんなに勝利に迷惑かけて生きてたのね……。すいません……と項垂れる私に、ぶふっ、と楽しそうに勝利が笑った。
「別に、Aのワガママは嫌じゃないし、迷惑かけられてるなんて思ったことないけど」
「ならいっか」
「そういうところだよ」
簡単に立ち直った私に勝利が呆れたような視線をよこす。だって勝利がそうやって甘やかしてくれるから、私は調子に乗るし期待しては落ち込んだりしてるんだけどな。
駅に近づき街灯の数が増える。近づいてきたコンビニの看板を眺めていると、昼間風磨くんたちとアイスを食べたことを思い出した。
「勝利はアイスって聞いたら何を思い浮かべる？」
「えぇ、何急に。アイスって言ったら……あれじゃない？ いつも一緒に買うやつ」
キョトンした顔でそう言った勝利の言葉に、今度は私が吹きだしてしまった。一緒だ、私と。
「でもさ、勝利が好きなのチョコミントアイスじゃん。あれはコーヒー味でしょ」
「それを言ったらAだってバニラが好きじゃん」
その通り。私が好きな味はバニラで、勝利が好きなのはチョコミント。なのにコンビニに寄った帰りに買うのはいつもコーヒー味。
「なんであのアイス買うようになったんだっけ？」
「なんでだっけ。姉さんが買ってくれたんだったかな」
たどり着いたコンビニの自動ドアをくぐった時、ぽつりと勝利が呟いた。冷房の効いた店内の空気が体温を冷ましていく。文房具の棚に向かいながら、アイスの話を続ける。
「今日何味のアイスが好きか訊かれて、そういえば私も勝利も好きな味が違うなぁって」
「なるほどね。でもあのアイス好きだけど」
「うん、私も好きだよ」
２個入りの消しゴムを手に取った勝利が、次は乳製品のコーナーへと歩いていく。なるべく賞味期限が遅い牛乳を選んで、後ろにあったアイスコーナーを一緒に覗き込んだ。
「体操服借りたお礼に奢ってあげる。何が良い？」
「それを言うなら水かけたお詫びに俺が奢るべきじゃない？」
「じゃあ今までの迷惑料でチャラにしてよ」
「冗談じゃん」
根に持つ、と顔を顰めた勝利は、さっとアイスを一袋手に取った。
「やっぱりこれじゃない？」
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