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「勝利」
無事に乾いていた体操服を持って玄関を出ると、勝利が塀にもたれて立っていた。
声を掛けると、視線を手元のスマホからこちらに向ける。「おつかれ」と勝利が微笑んだ。
「これ体操服。ちゃんと洗濯してるから」
「１時間くらいしか着てないでしょ。別にいいのに」
紙袋に入れた体操服を差し出すと、勝利がそう言いながら服を受け取った。確かに１時間くらいしか着てないけど、暑かったから汗はかいただろうし。良くないし、と言うと勝利が笑う。
「コンビニに牛乳のお使い頼まれたんだけどさ」
「消しゴム買いにコンビニ行こうと思ってたんだけどさ」
私の言葉に、大きな目をくりりとさせながら勝利が言った。顔を見合わせてふは、と２人で笑う。
「行こうか」
「うん」
体操服置いてくる、と勝利が向かいの家へ走っていく。それを待って、私たちは駅前へと歩き始めた。
「消しゴム使い切ったの？」
「いや、落としたみたい。なんか無くなってて」
勝利が首を傾げながらそう言う。それは落としたんじゃなくて盗られたんじゃないよね？ と言いそうになってやめた。笑えない冗談だ。
「そういやお昼に田中くんたちと歩いてるところ見たよ」
「本当？ 私も勝利今頃準備してるのかなーって思ってたけど見つけられなかった」
「準備で動き回ってたからね。どこ行ってたの？」
「コンビニ。お昼ご飯と、田中くんが私のアイス食べちゃったから奢ってもらいに」
「うわ、図々しい」
「違うよ、風磨くんが奢れって田中くんに言ったの」
「でもちゃんと奢ってもらってるところが図々しいよ」
「だって奢らなくていいよなんて言うのも怖かったんだもん」
田中くんとかクラスの男子といる時の風磨くんは圧倒的陽！ って感じで明るくてノリが良くて、２人で放課後遊ぶ時とはまた違った雰囲気を纏っている。最近実行委員で忙しくてあまり喋れてないのもあって、そんな時の風磨くんは少し遠く感じるのだ。
「……勝利はクラスにいる時は優等生って感じだよね」
「え？」
「イケメンで勉強も運動もできる真面目な人、みたいな」
「その通りじゃん」
「その通り……だけどぉ」
それはそうだけどさ、と首を振ると勝利がいひひ、と楽しそうに笑った。
だって、仲良しの岸くんとか、同じ中学だった聡くんとかマリウスくんとかには構ってほしくてイタズラするじゃないか。そう説明すると「構ってちゃんみたいに言わないで」と怒られた。
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