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なぜか田中くんにアイスを奢ってもらうことになり、そのまま私の居残りが決まった。
凪沙はやっぱりにやにや笑いながら「まぁ頑張れ！ っていうことで新学期に」とさっさと帰ってしまい、取り残された私は風磨くんの後をうろうろとついていくことしか出来ない。
「葉月さん何のアイスが好き？」
「お前奢るならハーゲンダッツ一択だろ、なぁA？」
「いやっ！ ガリガリくんで大丈夫です！」
昼飯買いに行こう！ とイケメン陽キャ２人組に連れられて校舎の外に出る。グラウンドでは運動部が活動を始めていて、きっと勝利も今頃準備してるんだろうなぁと思った。
「え、ガチでガリガリくんでいいの？」
「……ガリガリくんよりはスーパーカップが好きです」
「正直でよろしい！」
んはは、と楽しそうに風磨くんと田中くんが笑う。陽キャのノリ……分からん、と思いながら合わせて笑っておく。ダッツを奢ってもらう勇気はさすがになかった。
「Aはアイスなら何味が好き？」
「アイス？ 定番のバニラとかチョコはよく買うかな」
あんまり冒険はしない方なので、期間限定よりも定番の味を手に取ることが多い。
そう話すと、風磨くん達は「あー、ぽいわ」と笑った。見た目通りの性格をしているらしい。
「でもコーヒー味がよく食べてるかな」
「コーヒー？」
「うん。半分に出来るアイスあるじゃん、あれをいつも割り勘してる」
勝利とコンビニに寄った時の定番。テスト期間なんかに息抜きで外に出た時は、駅前のコンビニでアイスを半分にして食べながら帰る散歩に出ることが多い。
冬は肉まんとか唐揚げとか。
だから、別に特別コーヒー味が好きってわけじゃないけれど、アイスと聞いて思い浮かぶのはあの味だ。
……思い出したら食べたくなってきたな。今日の帰りに買って帰って、体操服のお礼に半分あげようか。
「へぇえ」
帰宅してからのことを考えていると、田中くんが笑いを堪えながらこちらを見ている。変なことでも言っただろうかと慌てると、彼は「葉月さんじゃないよ」と笑った。
「誰と、っていうのは訊いていやつ？」
「幼馴染だよ」
「仲良いんだね」
「うーん、悪くはないね」
ひねくれた返事に田中くんと風磨くんが「なんだそれ」と呆れたように笑う。結局どのアイスを買ってもらうか決める前にコンビニにたどり着いた。
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