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転校生の菊池くんはあっという間にクラスに馴染んだ。
頭の回転が速いのか、引き出しが多いのか。おそらく両方なんだろうけど、大抵の人と会話が弾んでいたし、菊池くんの放つ一言でいつも周りの人達は笑っていた。近くにいてたまたま会話が聞こえてきてしまった私も笑うのを我慢することもあったくらい。
授業で当てられてもスラスラ答えるし、体育のバスケでも大活躍だったらしい。「映画みたいな転校生だね」なんて凪沙が感心していたけれど、全くその通りだと思った。
そんな菊池くんは、2週間経っても教科書だけは未だに全部揃っていなくて、1日のうちどれか1科目は机をくっ付けて授業を受ける時間があった。
「いつもごめんな。世界史がどこにも売ってねーの」
「フリマアプリ?」
「フリマアプリと古本屋。諦めて新品買うべき?」
「うーん。でも世界史って週1しかないから、もったいない気もする」
「よな」
うちのクラスは全員日本史Bを選択してるから、世界史は大まかにしかやらない。
地道にフリマアプリで教科書を買い集めている菊池くんは、そういった副教科系の教科書を探すのに苦戦しているらしかった。
「葉月さんが隣の席じゃなくなる前に揃えないとな」
世界史の先生が来るのを待つ間、菊池くんがポツリとそう呟く。
隣を見ると、頬杖をついて横目でこちらを見る菊池くんとぱちりと目があった。
「葉月さんが声掛けてくれてめちゃくちゃ助かったんだよ。俺ホントは人見知りだから」
「嘘だ」
「嘘じゃねーわ」
絶対嘘だよ……あんなにクラスの人と仲良くなってて、田中くんとかと昼休みめっちゃふざけてるじゃん。
私よりクラスに馴染んでる気がする菊池くんが人見知りには到底思えない。
「全然信じてくれないじゃん。俺この2週間めっちゃ頑張ったんだよ」
クスクスと菊池くんが笑う。その姿は自然体で、やっぱり頑張っているようには見えないけれど、それもわざとそんな風に見せているんだろうな。
「……なら、私もあの時頑張って声掛けて良かった。私も人見知りなんだよ」
「あー、だろうね」
「だろうねって」
「だって敬語だったし、すっごい怖がってたじゃん。俺怖くないよ」
「ご、ごめん」
怖そうって思ってたのバレてたのか。身近にいる男の子なんて勝利くらいだからなぁ。
「じゃあお詫びに、私も菊池くんの教科書探し手伝うよ」
「まじ? あざっす」
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ハル(プロフ) - ハッピースクールさん» ハッピースクールさん!こちらも来て頂いてありがとうございます(^^)頑張ります!どうぞよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 名無し96398号さん» コメントありがとうございます!全部読んで下さったんですか!?ありがたや…!無理しない程度に頑張ります!のんびりお付き合いくださいね(*^^*) (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハッピースクール(プロフ) - ハルさんのお話大好きで、新作楽しみにしてました。頑張ってください (2021年8月22日 2時) (レス) id: ce9527749f (このIDを非表示/違反報告)
名無し96398号(プロフ) - 勝利くん担でハルさんのお話全て読ませていただいています!今回もものすごく楽しみです、、!無理しない程度に頑張ってください!! (2021年8月21日 23時) (レス) id: 55f375899c (このIDを非表示/違反報告)
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