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「くっ付けてもいい?」
「うん!」
慌てて私も動かして隙間を埋める。真ん中に教科書を置いた時、先生が教室に入ってきた。
「じゃあ号令……そこは教科書忘れたのか?」
先生がこちらを指さしてそう言う。慌てて首を振ると、「先生」と菊池くんが手を挙げた。
「今日転校してきたばかりで教科書持ってないので、葉月さんに見せてもらいます」
「ああ、転校生の。分かった」
先生はひとつ頷くと、もう一度「号令お願いします」と言った。号令は日直の仕事だ。慌てて起立、と言うとガタガタ音を立てて皆が立ち上がる。
「……怒られるとこだったね」
お願いします、と号令をして席に着くと、菊池くんがクスクス笑ってそう言った。
「ねぇ、今日ある授業全部見せてくれない?」
「え、全部持ってないの」
「持ってない。ルーズリーフと筆箱しか持ってない」
「そりゃカバンぺっちゃんこだよ……」
私の言葉に菊池くんがぶふ、と笑う。くつくつと手の甲で笑いを堪える姿に「え、なんで笑うの」と横顔を見ていると「コラ」と黒板の前から先生の声がした。
「葉月と……菊池だったか。教科書一緒に見るのは良いけど私語はしないこと」
「「はい……」」
ピシリとチョークを持った手で指を指されて、2人揃って頭を下げる。
「……結局怒られちゃったね」
先生が板書を始めると、菊池くんがコソッとそう言って笑った。
「ね」
いひひ、と2人で笑っていると、先生がくるりとこちらを向く。慌ててシャーペンを握って前を向いて、真面目に授業を受けているフリをした。
・
「あげる」
5時間目が始まる5分前。ポン、と机の上に置かれたのは、12個入りの一口チョコレート。え? と見上げると菊池くんが立っている。
「今日のお礼。教科書ずっと見せてもらってるから」
「ええ、良いのに。仕方ないじゃん、今日来たばっかりなんだから」
「でも、明日も見せてもらうかも」
「教科書違った?」
「全然違った。日本史とチャートくらいじゃね」
ぱかりと赤い箱を開けて、中のビニールをちぎる。一粒摘んで口に含むとあっという間にとろりとチョコレートが溶けた。菊池くんにも差し出すと、嬉しそうに一口食べる。
「最悪だね、お金かかっちゃう」
「とりあえずメルカリで探すわ」
「メルカリで売ってるの?」
「結構売ってる」
ほら、と見せてくれたスマホの画面。ほんとだ、結構売ってる……。
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ハル(プロフ) - ハッピースクールさん» ハッピースクールさん!こちらも来て頂いてありがとうございます(^^)頑張ります!どうぞよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 名無し96398号さん» コメントありがとうございます!全部読んで下さったんですか!?ありがたや…!無理しない程度に頑張ります!のんびりお付き合いくださいね(*^^*) (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハッピースクール(プロフ) - ハルさんのお話大好きで、新作楽しみにしてました。頑張ってください (2021年8月22日 2時) (レス) id: ce9527749f (このIDを非表示/違反報告)
名無し96398号(プロフ) - 勝利くん担でハルさんのお話全て読ませていただいています!今回もものすごく楽しみです、、!無理しない程度に頑張ってください!! (2021年8月21日 23時) (レス) id: 55f375899c (このIDを非表示/違反報告)
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