▽ ページ22
先生は、「この後会議があるけど……でも仕方ないか」と悩んでいる。私の家は遠いから、往復するとなると結構な距離がある。送ってもらうのは申し訳ない。
「あの、先生……」
私一人で帰れます、と続けようとした時、ガラリと保健室のドアが開いた。
「失礼しまーす。葉月さんの荷物持ってきましたー」
どこか間延びした声が入口から聞こえてくる。少し開いたカーテンの隙間から外を見ると、私のリュックを抱えた風磨くんがこちらに歩いてきていた。
「風磨くん!」
「A大丈夫? 荷物持ってきたよ」
「ありがとう。大丈夫だよ」
ここ置いとくな、と風磨くんが私のリュックを近くの椅子に置いた。……と、そのリュックはするりと勝利の手によって持ち上げられる。
「先生。僕と葉月さん地元が同じなので、一緒に帰ります」
「え」
「え? そうなの?」
「向かいなので大丈夫です」
「ちょ、勝利……」
ポカンとした私と風磨くんと先生の視線を受けながら、何でもなさそうな表情で勝利が話を進める。
先生は、「ならお願いね〜」とふわりと微笑むと、私達を残したままカーテンの向こうへ出て行ってしまった。
「ちょっと勝利、何言ってんの?」
「何って、38℃近く出しといて一人で帰れると思ってるの?」
「思ってないけど、でも勝利部活……」
勝利の言葉に、風磨くんが「38?」とぎょっとした顔で呟く。ああもう、余計なことを。
「俺、部活も何もないんで家まで付き添えますけど」
「どうも。ありがとうございます。でもAは俺が連れて帰るので大丈夫です」
風磨くんの申し出に対し、勝利は丁寧に、けれど有無を言わせない口調で断った。私のことなのに私抜きで進んでいく会話にもう文句を言う気も起きない。
風磨くんはちらりと私を見ると、「分かりました」とうすく微笑んだ。それから、右手に提げたままだったトートバッグを私に差し出す。よく見ると、いつも体操服を入れるのに使っているカバンだった。
「これ、凪沙ちゃんから。制服」
「あ!」
「じゃあ、俺は帰るわ。ゆっくり休めよ」
ぽすりと私の頭に手を置くと、風磨くんは保健室の入口の方へ歩いていった。残されたのは、黙ったままの勝利と私。見上げると、少し顔を顰めたまま風磨くんが歩いていった方向を見つめる勝利がいた。
「……じゃあ、着替えたら追いかけるから先に歩いといてよ」
「もう良くない? それ」
「良くない!」
260人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハル(プロフ) - ハッピースクールさん» ハッピースクールさん!こちらも来て頂いてありがとうございます(^^)頑張ります!どうぞよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 名無し96398号さん» コメントありがとうございます!全部読んで下さったんですか!?ありがたや…!無理しない程度に頑張ります!のんびりお付き合いくださいね(*^^*) (2021年8月22日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
ハッピースクール(プロフ) - ハルさんのお話大好きで、新作楽しみにしてました。頑張ってください (2021年8月22日 2時) (レス) id: ce9527749f (このIDを非表示/違反報告)
名無し96398号(プロフ) - 勝利くん担でハルさんのお話全て読ませていただいています!今回もものすごく楽しみです、、!無理しない程度に頑張ってください!! (2021年8月21日 23時) (レス) id: 55f375899c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ