【d!】夏暁【短編】 (ページ6)

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アイドルなんて_sha ページ6

「シャオちゃんは、アイドルだね」
「おー、まあな」

幼馴染みのこの女は、物心ついた時からこういうことを言ってくる。
キラキラしてて、みんなに好かれてて、アイドルみたいだと。
悪い気はしないから適当に肯定しておくが、実際はそんなことない。仲間と野球して泥まみれになって、家でネトゲして下ネタで笑っとる普通の男子高校生や。
友達に不人気だといじられたり、告白してくる女子もノリや勢いでしてくるだけ。本気で好いてくれているのは、多分、いない。

「シャ、シャオちゃん、ひとり？」
「おん一人やで。一緒に帰るか？」
「うん！」

幼馴染みのこの女は、オレが一人の時しか話しかけてこない。今も一人で帰ろうとしている所に駆け寄ってきて笑っている。
走ったのか息が弾んで呼吸が荒く、首もとに汗が垂れて手で乱暴に拭った。胸が上下している……うわ、あかんあかん。

「野球部の練習試合、今週だっけ？」
「おう、応援に来てもええよ」
「いやいや、私はいいよ」
「なんでや、予定でもあんの？」
「ううん、でも女の子なら毎回たくさん来るでしょ」
「ちぇー、格好ええところ見せたるのに」
「野球してるシャオちゃん、アイドルみたいだもんね」

また、そういうこと言う。
恥ずかしげもなく格好いいとかアイドルみたいとか言うくせに、みんなのいる前で話したがらないのは何なん。何に気を使っているのかわからんけど、オレはもっと話したい、と思う。
コイツのことを変な目で見る男たちの前で堂々と親しげに話してやりてぇ。アイツら悔しがるやろうなぁ。

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