【d!】夏暁【短編】 (ページ5)

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ぐりぐりと頭を撫でて部屋を出ていくぴーくんを見送って、もう一度手にしたキーケースを見る……好きな色と好きな動物モチーフ、まさに私の好みドンピシャだよ。
今日、まさかプレゼントがあるなんて思ってなかった。そういえば前に電話してる時、キーケースが欲しいって言った気がする。でも彼はほーんなんて流してたし、私もおねだりしたつもりじゃなかったのに。

もしや、私になにかやましいことでもあるのかな……罪滅ぼし？浮気？これで許して欲しいっていうならそれは無理な話だよぴーくん。

「とりあえず荷物置いて座ったら？いつまで立っとるん？」
「あ、そうだね……ねぇ、なんで今日プレゼント？誕生日でも記念日でもないよ？」
「え？何もない日にプレゼント渡しちゃいけないん？」
「そうじゃないけど……でも……」
「……何の心配しとるか知らんけど、ただあげたかっただけやで。最近あんまり構ってあげられんくてすまんな」
「ほんと？浮気の罪滅ぼしじゃない？」
「無いわ、絶対無い」

手の中のキーケースと上着を脱いだラフな格好の彼を交互に見て、やっぱり好きだと実感する。話を聞いてないようで覚えてるところとか、たまにしてくれるサプライズとか、滅多にスキンシップしないのにこういう時は頭撫でてくれるところとか。

「本当にありがとう、大事にするね」
「おう、死ぬまで使って」
「ふふ、うん……ん？ぴーくんなんでエプロンしてるの？」
「え？今から夕飯作るから？」
「作ってくれるの？ぴーくんが？」
「俺はやる時はやる男やで」

謎のドヤ顔をする彼に驚いてプレゼントを落としそうになる。彼の手料理なんて今まで食べたことないし、作れることも知らなかった。これも全部最近構ってくれなかったから？つまりご褒美？

黒いエプロンをしてキッチンに向かう彼の背中にそっと抱きつく。細いと思っていた体は、それでも固くて筋肉質で。重ねられた手も私より大きくて少し暖かい。

「ありがとう、嬉しい」
「ふふ、どういたしまして」
「ほんと、好き。大好き」
「……知ってる」

抱き締めていた手を離すと彼はこちらを向いて、唇に触れるだけのキスをくれた。いたずらっぽく笑う彼に心臓がうるさくなる。

アメとムチのアメがこんなに甘いんだもん。依存しないなんて、やっぱり無理だ。

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