【d!】夏暁【短編】 (ページ3)

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一目惚れ_rb ページ3

それは、カフェで人を待っていた時。中々ソイツが来なくて暇で、テーブルに肘を付いて軽く寝ていた。

「いらっしゃいませー」

突然耳に入ってきた声は鈴の音のように響いて、まろやかで優しくて、あまりにも綺麗な声に衝撃を受けて目が覚めた。
なんや、今の。
オレもええ声やって言われるけど、それとは次元が違う。なにもかも違う。人気声優の可愛い甘い声とも違うし、アナウンサーの凛々しく綺麗な声とも違う。

次に襲ってきた衝撃は、その声がする方に目を向けた時。
そこには、白と紺のボーダーのトップスに普通のジーパン、よくみる茶色のエプロンという何の変哲もない格好でさえ着こなす可愛い女の子がいた。
は？意味わからんくらい可愛いわ。
垂れた横髪を耳にかける仕草、メモ帳を持って注文を聞く笑顔、一挙手一投足に見惚れた。
こんなに目が離せないなんてこと、アニメのキャラクターでもない。

「ありがとうございましたー」

彼女が何かを喋る度にオレの指先に電流が流れる。おかしくて指を確認するが、目の前の手はいつもと変わらないオレの手。それでもまたあの声が聞こえるとビリビリ、切なく電流が流れ心臓が跳ねる。

これが一目惚れか、なんや初めてやけどしんどいな。
恋なんてする年齢ではないかもしれない。それでもやめようと思って諦められるものではないことを実感している。

「す、すみませーん」
「はーいただいま！」

あぁ、可愛い。近くで見ても可愛い。もっと近づきたい、もっと、もっと。
いつかはその手に触れたい、そして。

「ご注文でしょうか」
「あ、え、いや、」
「？」
「……コーヒー、おかわりお願いします」
「はい、かしこまりました」

笑顔で厨房に戻る彼女を見送り、頭を抱えて目を閉じる。
もっとなんかあったやろ、なんか話さないと何も進展せえへんぞ、しっかりしろよオレ！
こんなとき大先生ならどうすんねんやろ、アイツ遅刻すんなよ、なんでこんな時におらんねん。
……いや、おったら先に手を出される心配もあるな。遅刻してくれてよかったわ。

「お待たせいたしました、ホットコーヒーです」
「あ、ありがとう……」

ごゆっくり、と微笑んだ彼女にまた指先がビリビリする。
何でオレはこんなにヘタレなんや…。

。
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